義母の口癖
結婚してからというもの、義母はことあるごとに「親孝行しなさいよ」と私に言ってきました。
「お父さんの誕生日、何か用意してあげてね」
「家族なんだから、孝行するのは当たり前よ」
そして極めつけは「◯◯(夫)は忙しいんだから、あなたがうまくサポートしてあげて」という言葉。
まるで私が親孝行の責任者みたいで、いつも理不尽に感じていました。
なんでも夫の手柄に
義両親へのプレゼントや帰省の調整……気がつけば、すべて私がやっていました。
夫はソファでスマホをいじりながら、のんきに『ありがとー』と言うだけです。
それなのに義母は「◯◯(夫)は優しい子なのよね〜」と、夫を高評価。
なんだか、私の苦労が“夫の気遣い”としてカウントされているような気がして、やるせなくなりました。
それ、私の仕事じゃないですよね?
そんなある日、義母から電話がありました。
「最近、お父さんが寂しがってるの。もっと親孝行してあげて?」
その瞬間、つい口から本音がこぼれてしまいました。
「親孝行って、“嫁”の仕事でしたっけ? それ、まずはご自分の息子さんにお願いしてもらえますか?」
すると義母はムッとした様子で、「あなたが気を利かせてあげないと。それって“嫁”として当然の義務でしょう?」と言い放ちました。
この言葉に、私の中で何かがプツンと切れました。
まずは息子の教育をやり直して!
私はそのまま、勢いに任せて言ってしまいました。
「『嫁ならやって当たり前』って言う前に、息子さんを教育し直してください。私が気を利かせないと親孝行もできないような人に育ててきたのは、そちらなんですから」
義母は絶句。
隣で聞いていた夫も、完全にフリーズしていました。
でも、私は不思議とすっきりした気持ちでした。
そしてその夜、夫にはっきり伝えました。
「これからは、あなたの親のことはあなたが担当。私はもう、サポートしないよ」
夫は観念したように「……はい」と小さく返事をしました。
対等でいたいだけ
それ以来、義両親への連絡やさまざまな段取りは夫が担当し、私はひと息つけるようになりました。
私はただ「やって当然」ではなく、対等な関係でいたいだけだったのです。
“親孝行しろ”と嫁に押しつける前に、自分の子育てを見直してほしい。
そう言えたことによって、ほんの少し、自分を取り戻せた気がしました。
【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2025年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。