突然の宣言
結婚して10年、家計の管理はずっと私が担ってきました。
仕事をしながら、食費や光熱費を抑えるために工夫し、レシートとにらめっこしながら毎月のやりくりをしていた私にとって、それはもはや日常の一部。
ところがある日、夫が突然「これからは俺が家計を管理する」と言い出したのです。
思いがけない一言に、私は困惑し、「え? まさか金銭モラハラ?」と不安がよぎりました。
いやいや、うちの夫に限ってそんなことは……と自分に言い聞かせながらも、心の中はざわついていました。
赤字続きの家計
こうして、夫が家計を仕切る生活が始まりました。
けれど、最初の月から問題が続出!
無計画な買い物や外食が増え、光熱費のチェックもおろそかになり、家計簿はみるみる赤字になっていきました。
私は夫に文句を言い、夫も売り言葉に買い言葉で反発。
話し合うどころか、すっかりギスギスした空気が流れ、会話さえも減ってしまいました。
「このままじゃまずい」と思いつつも、私も引くに引けないまま、険悪な日々が続きました。
予想外すぎる【夫の本音】
そんな中で、夫も家計管理の難しさを痛感したようです。
ある晩、夫がぽつりと、「ごめん、思ったよりずっと大変だった……」と漏らしました。
驚いて顔を上げると、さらに夫は「本当は、君の負担を少しでも減らしたかったんだ」と続けます。
支配欲や不信感からだと決めつけていた私には、まったく予想外の言葉でした。
詳しく聞いてみると、私が夜遅くまで家計簿をつけたり、予算を立てたりしている姿が大変そうで、ずっと気になっていたとのこと。
それなのに私は、夫の気持ちを疑っていたのです。
胸がじんと熱くなり、涙がこぼれました。そしてすぐに「ありがとう」と素直に言えなかった自分が、少し恥ずかしくなりました。
家計は「分担制」で2人のものに
その後、夫婦でじっくり話し合いました。
そして、「どちらかが背負いすぎない」ことが、家計にも夫婦関係にも必要だと実感。
私が日々の細かい出費を、夫が貯蓄や大きな支出を担当する“分担制”に切り替えることにしました。
すると、不思議と家庭の空気もやわらいでいきました。
今では、毎月の家計会議がちょっとした夫婦のコミュニケーションの時間になりつつあります。
疑うよりも、まずは気持ちを聞いてみること。
そう気づいた私たちは、今、少しずつ“2人の家計”を育てています。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。