家庭菜園を楽しむ日々に、子供がふと気づいた「なんかニンジンが減ってるよ?」。はじめは動物の仕業かと思っていたけれど、ある日、筆者の友人・ともみさん(仮名)はその“予想外の真相”を目にすることになります。
家族の夢を詰めた小さな畑
ともみさんの家は、郊外にある庭付きの一軒家。
夫と3人の子供と暮らす5人家族で、共働きの日々の中、家族の時間を大切にしていました。
家を建てたとき、家族で楽しめる趣味をひとつ持とうと、小さな家庭菜園を始めたのです。
「子供たちと育てた野菜を、食卓に並べられたら素敵だよね」
そんな会話からスタートし、週末には家族みんなで土をいじり、苗を植え、水をあげました。
子供たちは毎日のように報告してくれました。
「トマトの花が咲いた!」「ピーマンが育ってる!」
その声を聞くたびに、笑い声が庭に広がっていきました。
ときどき訪れる義両親も、「いいわね、楽しそう。お野菜楽しみね!」と目を細めていました。
この庭は、家族みんなの“楽しみ”がぎゅっと詰まった場所だったのです。
タヌキか? ネズミか?
ある日の夕方、ともみさんが仕事から帰宅すると、子供が庭を見ながら言いました。
「なんかニンジンが減ってるよ?」
畑をのぞくと、土がところどころ掘り返されていて、まあまあ育って、そろそろ収穫の頃だったニンジンがいくつか見当たりません。
タヌキか? ネズミか? 一体なんだろう。
「動物かなあ、仕方ないね」そんなふうに思いながら、ともみさん一家はやり過ごしていました。
でも、その日から庭の野菜が、少しずつ消えていきました。
ジャガイモ、ナス、ピーマン。
どれも育ちかけで、あともう少しで収穫というタイミングばかり。
まるで誰かが、見計らって摘んでいったかのようでした。
いったい、何者が。家庭菜園は、ただの趣味ではありません。
子供たちと一緒に過ごす、かけがえのない時間でした。
それが何者かに滅茶苦茶にされている気がして、ともみさんの心はざわついていました。