子宝に恵まれず
結婚して数年が経ちましたが、なかなか子どもに恵まれず、私たちは不妊治療を始めることにしました。
義実家にもそのことは伝えていて、理解してもらっているつもりでした。
ある日、義両親の結婚記念日のお祝いで、家族全員が集まることに。
義兄夫婦は子どもを2人連れてきて、リビングは賑やかな笑い声で満ちていました。
義兄嫁の爆弾発言
そんな中、義兄嫁がいつものように「育児大変アピール」を始めました。
「毎日バタバタで自分の時間なんてないよ~」
「夜泣きもするし、もう本当しんどい!」
私は「そうなんですね〜」と相槌を打ちましたが、内心は少し複雑な気持ちでした。
すると次の瞬間、義兄嫁が爆弾を投下したのです。
「でもまあ、子なしの人には分かんないか〜。ラクでいいよね!」
リビングの空気が凍りつきました。
義兄は「おいおい、言いすぎ」と苦笑いし、義母も「まあまあ……」と曖昧な反応。
義父にいたっては「子どもいないと自由でいいよな〜」とさらに追い打ちをかけるように言いました。
私は何も言えず、ただうつむくしかありませんでした。
夫の反撃
その時です。夫の低くはっきりとした声が響きました。
「今の、笑って済ませることじゃないだろ」
その瞬間、リビングの空気がピンと張りつめました。
さらに、夫は義兄嫁をまっすぐに見据え、
「俺たちが不妊治療してるの、知ってるよね。体も心もキツいけど、それでもがんばってるんだよ。そんな人間に向かって、“子なしでラク”って言うのは、どう考えても酷すぎる」
と言いました。そして、
「わかんないなら黙っててほしい。俺の妻を、軽く扱わないでくれ」
と、私のことをかばってくれたのです。
あの一言が、今の私を支えている
一瞬、誰も何も言えませんでした。
その後、義兄が「あの、ごめん、本当に……」と謝罪し、義母も「軽く聞こえちゃったなら、私も悪かったわ」とポツリ。
義兄嫁は顔を真っ赤にして、黙り込んでいました。
あの日、もし夫が笑ってごまかしていたら、私は心に深い傷を負っていたと思います。
しかし、夫は私のために立ち上がってくれました。
思いやりや優しさは、ただ寄り添うだけじゃない。
ちゃんと「それは違う」と言える強さが、本当の優しさなのかもしれないと思った出来事でした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。