働きながら学校へ
私はシングルマザーで、一人息子のRを育てています。
経済的にはカツカツの生活で、進学費用に頭を悩ませていました。
息子のRは専門学校進学時に、とある奨学生として、働きながら学校へ行くことを選択。
親子で事前の説明会に参加することになりました。
その奨学生は配属された店舗で寮が用意されます。
私たちが説明会で紹介された寮は、都内のワンルームマンション。
設備も比較的新しく、立地条件も良かったため、私たちはホッとして新しい生活に夢を膨らませていたのです。
思いもよらない現実
そして3月。
実際に配属が決まったのは、説明会で紹介された店舗ではなく、通学に1時間以上かかる店舗でした。
「学校に近い店舗に配属する」と聞いていたため、担当者に問い合わせることに。
すると「3月に卒業するはずだった学生が留年して空きが出なかったから、空きのある店舗に配属になりました」とのこと。
不安を抱えたまま、私たちは配属先の店舗へ挨拶に行くことになったのです。
全然違う……
店舗に着くと、そこはお世辞にもきれいとは言えない古~い建物。
店舗の中に住む部屋があるとのことで、Rが使う部屋へ案内されると、そこはまるで物置小屋のような部屋だったのです。
広さは4畳半ほど、ブカブカした畳、かび臭い匂い、誰の物かもわからない私物……。
あまりの状況に私が「ここに住むんですか?」と聞くと、「引っ越すまでには片づけますから♪」と店長さんは笑顔でこたえてくれました。
しかし、説明会で紹介された寮とは天と地ほどの差があり、Rはショックを受けていたようでした。
心が折れた
Rは引っ越し直後からあまりの住環境の悪さに心が折れてしまい……結果的に1年で奨学生を辞めることになってしまいました。
私は何とか頑張るようにRを励ましていましたが、確かにあの状況はちょっとひどかったと思っています。
「どんな状況でも頑張れ!」と突き放すべきだったのか、未だに後悔することもあります。でも、あまりに酷い状況を自分も見てしまっていたので、少しRの気持ちもわかるような気がしました。
【体験者:40代女性・会社員、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:RIE.K
国文学科を卒業し、教員免許を取得後はOLをしていたが、自営業の父親の病気をきっかけにトラック運転手に転職。仕事柄多くの「ちょっと訳あり」な人の人生談に触れる。その後、結婚・出産・離婚。介護士として働く。さらにシングルマザーとして子供を養うために、ファーストフード店・ショットバー・弁当屋・レストラン・塾講師・コールセンターなど、さまざまなパート・アルバイトの経験あり。多彩な人生経験から、あらゆる土地、職場で経験したビックリ&おもしろエピソードが多くあり、これまでの友人や知人、さらにその知り合いなどの声を集め、コラムにする専業ライターに至る。