一言が変えた関係
ある晩、またしても息子は門限を大幅に過ぎてから帰宅しました。
いつもなら叱るところですが、その時なぜか口をついて出たのはまったく違う言葉。
私自身、繰り返される言い合いに疲れていたのだと思います。
「もう門限はなしでいいよ。あなたが悪いことや、人として間違ったことはしないって信じてるから。」
息子は一瞬驚いたような顔をして、何も言わず自室へ戻っていきました。
その背中を見送りながら、私は思いました。
この子は、ただ“信じてほしかった”のかもしれないと。
私が「信じている」と口にした瞬間、息子の中で何かが動いたような気がしたのです。
信じるということ
それ以来、息子は以前のように門限を大きく破ることはなくなりました。
帰りが遅くなる日は、ちゃんとLINEで連絡をくれるようにもなったのです。
ピリピリとした空気も、いつのまにか穏やかになっていました。
息子の反抗は、親を突き放したかったのではなく、本当は「信じてほしい」という静かな訴えだったのかもしれません。
子どもを信じることには、勇気がいります。
でもその勇気が、親子の信頼関係を育み、子どもを1歩成長させる力にもなるのだと実感しました。
私たち親子の門限バトルは、そんな気づきとともに、静かに幕を下ろしたのでした。
【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2025年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。