朝の忙しさを気遣い、義母が毎日作ってくれる孫のお弁当。その“ありがたさ”は、ある日息子の一言で揺らぎ始めてしまった。これは、筆者の知人・涼子さん(仮名)が、高校生の息子と義母の間で揺れ動いた“お弁当問題”の実話です。
忙しい朝
「朝は大変でしょう?」と、義母が率先して冷蔵庫から手際よく食材を選んでいる背中を見たとき、涼子さんは思いました。「ありがたいな。私、甘えさせてもらっちゃおう」と。
高校生の息子を育てながらの毎朝は、時間との戦い。義母がお弁当作りを、かって出てくれたときは、正直ホッとしたのです。
けれど、ある朝のこと。息子のカイト(仮名)くんが、涼子さんにぽつりと漏らしたのです。
「ばあちゃんのお弁当さ、ちょっと、どうにかなんないかな」
どうやら、息子のお弁当には、涼子さんの知らない“秘密”があったようです。
“お弁当メニュー”に、息子が異議申し立て
ある朝、息子のカイトくんがぽつりと漏らしました。
「ばあちゃん、魚と漬物ばっかだから、母さん、なんとかしてくれない?」
こっそりフタを開けてみたら、やっぱり今日もメザシ。
ごはんの上にポン。ど真ん中に1本、堂々と居座っていました。
他のおかずは梅干、春菊のごまあえ、切り干し大根。
脇を固めるサブメニューも、なんとも渋いラインナップ。
義母は満面の笑みでこう言うのです。
「最近メザシが売ってなくてね〜、わざわざデパ地下で買ってくるの」
「健康的でしょ? 男子高校生はお米がいっぱいのお弁当で、ちょうどいいのよ」
……いや、焼肉。唐揚げ。ハンバーグ。
そういうのが食べたいんです、今どきの高校生男子は!
と、涼子さんは心の中で思わずツッコミ。
でも、義母の善意を思うと、どうしても言い出せない。
そんな日々が、気づけば1ヶ月も続いていました。
そしてある朝、涼子さんのスマホに、息子からのお怒りメッセージが届いたのです。
「ねえ、お弁当、いい加減になんとかしてよ!」
──息子の限界は、とうに超えていました。