何気ない一言から知った、母のつらい過去。
かつて父に浮気されたという衝撃の告白と、それを乗り越えた母の強さに、胸を打たれたA美さんが話してくれたエピソードです。

父の昔の過ち

あるとき、なんの気なしに母に聞いてみたことがあります。
「お父さんって、浮気したことあるの?」

お茶を飲んでいた母は一瞬驚いた顔をしましたが、少し間をあけてから静かに答えました。
「昔ね、一度だけ浮気されたことがあるのよ」

「えっ?」
自分から聞いておいてなんですが、私は思わず声を上げてしまいました。

仲のいい夫婦だと思っていただけに、驚きが隠せなかったのです。

母の強い愛情

母はふっと笑うと、言葉を続けました。
「でもね、あのときお父さん、泣いて謝ったのよ。つらかったけど、あなたには不自由はさせたくなかったし……。それからはずっと、家族のことを第一に頑張ってくれていたからね」

まるで昔話のように穏やかな表情で話す母を見て、切ない気持ちになりました。
私が何も知らず、愛情いっぱいに育ててもらっていた裏では、母が深く傷つき、たくさん泣いたこともあったのだと思うと、胸が詰まります。

「これでおあいこね」

父を許して前に進んだ母は、なんと器が大きいことでしょう。
離婚を選ばなかったのには、私の存在も大きく影響したことも想像がつきます。
私たち家族は、母の懐の広さと深い愛情で成り立っていたのだとしみじみ思いました。

「本当はね、あなたにはずっと内緒にしようと思っていたの。だってお父さんは、あなたのことが大好きだから、知られたくないはずでしょう。ふふふ、でも、言っちゃった。これでおあいこね。お父さんには内緒よ」

まるで親友と秘密を共有する少女のように、茶目っ気たっぷりに言う母を、私はギュッと抱きしめました。

母が守った、家族の絆

この件について、母の言う通り、父の前では知らないふりをしておこうと思います。
母が守ってくれた家族の絆を、これからも大切にしていこうと決めました。

浮気を許すのが一概に正しいとは思いませんが、私は母のことを深く尊敬しています。

【体験者:30代女性・会社員、回答時期:2025年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:大城サラ
イベント・集客・運営コンサル、ライター事業のフリーランスとして活動後、事業会社を設立。現在も会社経営者兼ライターとして活動中。事業を起こし、経営に取り組む経験から女性リーダーの悩みに寄り添ったり、恋愛や結婚に悩める多くの女性の相談に乗ってきたため、読者が前向きになれるような記事を届けることがモットー。