けれど、子どもたちが思春期を迎える頃、家の空気が少しずつ変わりはじめました。
ある日の夕食後。
ハナさんがキッチンでお皿を洗っていると、息子がふらりと寄ってきて、小声でひと言。
「オヤジ、おかしくない? 自分でやれよ。キモッ」
そのまま捨て台詞を残して、通り過ぎていきました。
ハナさんは、にやりと笑いました。
また別の日。娘がソファーのほうを見ながら吹き出しました。
「パパ、それ、ダサ!」
義母と並んでひざ掛けを分け合い、ワインを飲んでいる夫。
「アハハ! その歳で何やってんの!」
娘は遠慮もなく大笑いしながら、去り際に言いました。
笑う門には、ガッツポーズ
高校生になった息子と娘は、夫と義母の距離感に、遠慮なくツッコミを入れるようになっていました。
「ばあば、それ普通じゃないよ」
「パパ、その歳で甘えすぎ!」
そしてある日、娘のひと言が夫の胸にグサリと刺さりました。
「えっ、パパたちやめなよ! ママに悪いって思わないの?」
ハナさんは、こっそり笑いました。
長いこと鬱々としていた思いが、スーッと消えていったのです。
今では、子どもたちのツッコミのたびに、キッチンカウンターに隠れて小さくガッツポーズを決めているそうです。
子どもたちは、ハナさんにとって最高の味方です。
義母は気まずいのか、顔を出す回数も減ったそうです。
子どもたちの大笑いしながらのツッコミに、夫も「え? 変かなぁ?」と照れたように返すことが増えました。
以前は考えられなかった家族の笑い声が、今ではふつうに聞こえてくる。
ハナさんは、そんな様子をシメシメと眺めながら、
自分の時間を取り戻す日々を、ようやく送れるようになったそうです。
【体験者:50代・会社員、回答時期:2024年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:神野まみ
フリーランスのWEBライター・コラムニスト。地域情報誌や女性向けWEBメディアでの執筆経験を活かし、医療・健康、人間関係のコラム、マーケティングなど幅広い分野で活動している。家族やママ友のトラブル経験を原点とし、「誰にも言えない本音を届けたい」という想いで執筆を開始。実体験をもとにしたフィールドワークやヒアリング、SNSや専門家取材、公的機関の情報などを通じて信頼性の高い情報源からリアルな声を集めている。女性向けメディアで連載や寄稿を行い、noteでは実話をもとにしたコラムやストーリーを発信中。