姿を見せない“兄嫁”
東京へ行ってから疎遠になった兄が結婚したのは4年前。突然「入籍した」とだけ連絡があり、結婚式もなし。相手の写真も送られてきませんでした。「人見知りだから」と聞かされ、最初はあまり気にしていませんでした。
それから何年経っても兄嫁は一度も姿を見せず、お正月もお盆も兄だけが年に一度帰省する程度。
40代後半だった兄の結婚に、母は他界していたし、父も私も反対もせず祝福しました。最近になって、父が「せめて一度、顔を見てみたいな」と言うようになっていました。
偶然の1枚に写っていた、見覚えのある顔
ある日友人と話しているとき、東京の人気マルシェの話題に。
「めっちゃおしゃれなスイーツ屋さんがあってね、店主が顔出ししてないのにフォロワーすごいんだよ!」と、SNSの投稿を見せてくれました。
そこには、かわいくラッピングされた焼き菓子と一緒に、イベントに立つ女性と、その隣で接客している男性の写真が。
私は思わず息をのみました。無精髭を生やしたこの男性、どう見ても兄だったのです。
SNSの中で出会った兄嫁
「え、この人……」と声が出かけた私に、友人は「この店主さんの旦那さんらしいよ。素顔を出さないハンドメイド系の人たちって多いから、イベントでは家族が手伝ってることも多いんだって」と何気なく言いました。
帰宅してすぐにSNSを調べると、そこには“兄嫁”らしき人物が、焼き菓子やインテリア雑貨の写真を日々投稿していました。フォロワー数は数万人、顔は一切出さず、日常の姿も謎に包まれていました。
兄が家族に紹介しなかったのも、彼女のスタンスを守っていたから?
初めて兄嫁の存在を“知った”のが、SNSの中だったなんて。思わず「今どきだな」と、兄の知られざる日常に驚いたのでした。
【体験者:30代・会社員、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Yuki Unagi
フリーペーパーの編集として約10年活躍。出産を機に退職した後、子どもの手が離れたのをきっかけに、在宅webライターとして活動をスタート。自分自身の体験や友人知人へのインタビューを行い、大人の女性向けサイトを中心に、得意とする家族関係のコラムを執筆している。