そんな空気を一変させたのは、ふらりと現れた父の友人。
でもその裏には、まさかの “秘密” が隠されていて──
父のハンストと緊張する家族
父は普段は無口ですが、怒ると突然ハンストを起こすクセがありました。
理由は様々ですが、たとえばお弁当に箸が入っていなかった程度のことでも、家の中は氷点下のような空気に包まれます。
この日も何が気に入らなかったのか、父は夕飯を拒否し、帰宅後ずっと不機嫌。
私たち家族は緊張しながら、そっと様子をうかがっていました。
動じない母と気をつかう子どもたち
母はというと、そんな父にも慣れているのか、いつも通りに話しかけては無視され、それでも特に気にする様子もありません。
子どもながらに「本当にそれでいいの?」 と、内心ドキドキしていました。
父が食べない中で、自分たちが夕飯を食べていいのかどうかすら悩んでしまい、箸を持つ手もなんだか落ち着かない。
姉弟で目を見合わせ「どうする?」 と小声で相談したのを覚えています。
そんな重たい空気が、家の中に漂っていました。
ふらりと現れたOさん
そんな中、ふらりとやって来たのが、父の数少ない友人Oさん。
「なんで怒ってるんだ?」 と笑いながらいきなり酒盛りが始まりました。
接客業で明るい性格のOさんはとても話上手。
「こんなときは飲んじゃえばいいんだよ!」 と父にお酒を注ぎ、面白おかしく職場でのエピソードを話し出しました。
するとたちまち場は和み、父も少しずつ機嫌を直し、ついには母の作った夕飯にも手を伸ばしました。
実はOさんも……
数時間後、酔っぱらったOさんは自宅に電話をかけて奥さんを呼ぶことに。
ところが、迎えに来た奥さんのひと言で衝撃の事実が判明。
なんとOさん自身も夫婦ゲンカの真っ最中で、家出してきたところだったのです。
これには両家で大笑い。
「怒ってるお父さんと萎縮してるみんなを見たら、なんだか自分も反省できたよ」 とOさんは言い、奥さんと仲直りして帰りました。
それ以来、Oさんがふらっと現れるたび「またケンカしたのかな」 と笑い合うのが、我が家のちょっとした恒例行事です。
【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。