「好き」を大事にしていた、母の生き方
私の母は保育士です。子どもが大好きで、毎日忙しく走り回りながらも、いつもニコニコ。疲れているはずなのに、家ではそんな素振りを見せず、私たち家族の話をちゃんと聞いてくれる人でした。
母にとって大事なのは、まわりの評価よりも「自分らしくいられるか」だったように思います。
勉強よりも、私の気持ちを尊重してくれた
中学生の私は、勉強はそこそこ。けれど体を動かすのが大好きで、チアダンスに夢中でした。母はそんな私に「勉強しなさい」など言わず、やりたいことを尊重してくれたのです。
「あなたが本気で打ち込めることなら、応援するよ」というスタンス。おかげで、私はチアの強豪校に推薦で進学できました。
クローゼットから出てきた、意外な一面
ある日、部屋のクローゼットを片付けていたら、奥から母の大学の卒業証書が。よく見ると、それは日本を代表する名門大学のもので──。
「え!?」思わず慌てて祖母に尋ねると「あら、知らなかったの?」とあっさり返されてしまいました。
「母のように優秀じゃない私が、どこかでがっかりされていたらどうしよう」「本当はもっと違う未来を期待されていたんじゃ」
急に不安な気持ちになった私は、いてもたってもいられず、思い切って母に聞いてみることに。
すると返ってきたのは、想像以上に温かな言葉でした。
母の言葉が、今の私の支えになっている
母は、少し笑ってこう言いました。
「あなたが夢中でチアに打ち込んでいる姿、本当にかっこいいよ。お母さんは、あなたが自分の力で笑顔になれる人生を歩んでくれることを、一番に願っているの」
その瞬間、胸の奥がふっと軽くなった気がしました。
「もっと頑張らなきゃ」「母に認められたい」そんな無意識のプレッシャーが、すーっと溶けていくようでした。
学歴は隠していたわけではなく、ただ話す機会がなかっただけだそう。そして、保育士を選んだのも、心から子どもが好きだったから。そんな母らしい生き方を、誇りに思っています。
そして今、子育てをする私も、母のように子どもの「好き」を信じて寄り添える親でありたいと、強く思っています。
【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2025年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Yumeko.N
元大学職員のコラムニスト。専業主婦として家事と子育てに奮闘。その傍ら、ママ友や同僚からの聞き取り・紹介を中心にインタビューを行う。特に子育てに関する記事、教育機関での経験を通じた子供の成長に関わる親子・家庭環境のテーマを得意とし、同ジャンルのフィールドワークを通じて記事を執筆。