すれ違う毎日
30代、会社員として働きながら、子どもを育て、家事もこなす日々。
気づけば、夫との会話は「今日遅くなる?」「明日の予定は?」といった最低限の業務連絡ばかりに。
お互いに疲れが溜まり、些細なことでイライラし、家事の分担や子育ての方針で衝突することも増えていきました。
そんなある日、私の中の何かが限界を迎えてしまったのです。
感情がぶつかった夜
その夜、夫と些細なことで口論になりました。
最初は冷静だったはずなのに、言葉を重ねるうちに感情が爆発してしまい、つい声を荒げてしまった私に、夫も負けじと応戦。話し合いは平行線のまま終了しました。
夫はそのまま別室にこもってしまい、家の中は一気に気まずい空気に。
それをきっかけに、私たちは口をきかなくなってしまったのです。
そこでやっと、私は自分がどれほど疲れていたかを痛感すると同時に、夫にも同じように大きな負担をかけていたことに気づきました。
このままではいけない、何とかしなければ……。
交換日記の記憶
「感情的なぶつかり合いではなく、冷静に話すにはどうすればいいのだろう」と悩む私の頭に浮かんだのは、昔、夫と恋人だった頃に交わしていた「交換日記」の存在でした。
私は思いつきで1冊のノートを取り出し、素直な気持ちを綴って夫に渡してみました。
直接言えなかった「ありがとう」や「つらかった」の言葉も、文字にすれば素直に伝えられる気がしたのです。
言葉の奥にあるもの
翌日、ノートには夫の返事が書かれていました。
そこには私に対する思いや、夫自身の不安が丁寧な言葉で綴られており、胸が熱くなりました。
それからというもの、私たちはノートを使って気持ちをやり取りするようになりました。
直接顔を合わせれば、感情的に言い返してしまいそうなことも、文字にすることでワンクッション置かれ、冷静に受け止めることができます。
昔のように甘い言葉を交わすことはありませんが、今の私たちには、現実的なやり取りこそが必要な“言葉”だったのかもしれません。
文字を通して、私たち夫婦はまた少しずつ理解し合えるようになってきました。今ではノートが、私たちの大切な“会話の場所”になっています。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。