結婚を控え、家族がひとつになろうとしていたある日。実母が語り始めた“昔の話”に、空気が一変した──。これは、筆者の後輩C子さんが体験した、予想外の告白の記録です。

義父の一言に凍る

笑いながら言われた、決定的なひと言

母の口から出た名前は、婚約者の父だったのです。
つまり──これから義父になる人。

それから数日、何も手につかないまま過ぎていきました。
母とも連絡を取らず、気持ちは整理できないまま。
そんな中、婚約者の実家でバーベキューをする予定が入っていました。

初夏の庭には家族が集まり、にぎやかに笑い声が響いていました。
C子さんも平静を装いながら、淡々と準備を手伝っていました。

そのとき、義父とふたりになる場面がありました。
「ほんと、いい子を見つけたな」
そう言われて、C子さんは少し照れながらうなずきました。

その直後です。
「さすが俺の息子。女性の好みが俺とそっくりだよ」

一瞬で空気が変わりました。
今の……まさか、わかって言ってる?

返事ができず、C子さんは手を止めました。 義父の笑顔だけが、妙にくっきりと残りました。
たったひと言で、世界がぐらついた気がしました。 それが冗談でも、笑えなかったのです。

「家族」の形を、自分で選ぶ覚悟

結婚は予定どおり行われました。今、C子さん夫婦は都会で共働き。毎日が慌ただしく過ぎていきます。そんな生活もあって、義実家とは必要最低限のつき合いだけにしているそうです。

「冠婚葬祭くらいですね……シャレにならないので」
C子さんはそう言って、肩をすくめながら苦笑いしました。

義父のひと言は、今でもふと思い出すことがあるそうです。怒りより先に、そっと距離を置こうと決めたそう。あの日から、目を見て話したことは一度もありません。

母も、それきり“過去の話”を話題にしていないとのこと。ただ「あのとき話してくれたこと」を、自分なりに受け止めた──C子さんはそう話していました。

「家族って、一番近くて、一番やっかいですね」
少し間を置いて、こう続けました。

「だからこそ、自分の人生は、自分で守りたいんです」
そのときのC子さんの表情は、どこか吹っ切れたように見えました。

【体験者:30代・会社員、回答時期:2023年3月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:神野まみ
フリーランスのWEBライター・コラムニスト。地域情報誌や女性向けWEBメディアでの執筆経験を活かし、医療・健康、人間関係のコラム、マーケティングなど幅広い分野で活動している。家族やママ友のトラブル経験を原点とし、「誰にも言えない本音を届けたい」という想いで執筆を開始。実体験をもとにしたフィールドワークやヒアリング、SNSや専門家取材、公的機関の情報などを通じて信頼性の高い情報源からリアルな声を集めている。女性向けメディアで連載や寄稿を行い、noteでは実話をもとにしたコラムやストーリーを発信中。