筆者の友人・T子は、とても厳しい家庭で育ちました。今なら「虐待か?」と勘違いされるほどの厳しさだったそうです。そんなT子はこんな親にはならないと心に決めていたのですが……。

厳し過ぎた親

私はとても厳しい家庭で育ちました。
それは今の時代なら虐待ともとれるほどの厳しさ。
門限を守らなければどんなに寒い冬の日でも家の中に入れてもらえなかったり、少しお箸の持ち方がおかしいだけで木の定規で叩かれたり……。

特に厳しかったのは母でした。
常に不機嫌な顔をして、私たちを怒鳴りつける母には恐怖を感じたこともあります。
暴力もいとわない厳しさに、「私は絶対こんな親にはならない!」と心に決めていたのです。

夫の一言

私は20代の前半で結婚し、2人の娘を授かりました。
優しく穏やかな夫と可愛い娘たち。
4人で幸せに暮らしていたのですが、ある時夫から背筋が寒くなるようなことを言われたのです。

「T子(私)、少し子どもたちに厳しすぎるんじゃないか?」

私は自分では全く気付いていませんでした。
確かに少し冷静になって考えてみると、母と同じような口のきき方や態度をしているかもしれないと思ったのです。
自分でも気付かないうちに母のようになっていたのかと思うと、心底ゾッとしました。

親の背中

ある日、娘たちと買い物へ行った時のこと。
長女が私の顔を見て「ママ、今日は怖い顔してないね♪」とニッコリと笑って言いました。

それは正に、私が母に対して思っていたことでした。
私は常に母の顔色をうかがい、怒らせないように気を遣っていました。
そんな自分も嫌だったし、怖い顔をして怒ってばかりいる母のことも嫌だったのです。

絶対あんな親にはならないと決めていたのに、自分が子どもの頃に思ったことと同じことを娘に言われて、とてもショックでした。

負の連鎖

それからは、夫の力も借りて少しずつ娘たちへの接し方を変えていくようにしました。
『自分が嫌だったことはしない』という大事なコトを夫が思い出させてくれたのです。

小さい頃、良かれと思ってしてくれていたのだと思いますが、しつけだと思っていた母の行いは、私にとっては虐待に近いものがありました。
私はここで負の連鎖を止めるつもりで子育てを頑張ろうと思っています。

【体験者:30代女性・パート、回答時期:2025年4月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:RIE.K
国文学科を卒業し、教員免許を取得後はOLをしていたが、自営業の父親の病気をきっかけにトラック運転手に転職。仕事柄多くの「ちょっと訳あり」な人の人生談に触れる。その後、結婚・出産・離婚。介護士として働く。さらにシングルマザーとして子供を養うために、ファーストフード店・ショットバー・弁当屋・レストラン・塾講師・コールセンターなど、さまざまなパート・アルバイトの経験あり。多彩な人生経験から、あらゆる土地、職場で経験したビックリ&おもしろエピソードが多くあり、これまでの友人や知人、さらにその知り合いなどの声を集め、コラムにする専業ライターに至る。