カウンターに置きっぱなしの夫のスマホを手に取ると、画面に通知が浮かんでいました。
差出人は「美由整体院」——
その下には「今夜は楽しみにしてるね」の文字。
お仕事、どうだったの?
手が震えました。心臓が跳ねるように脈打ち、画面を見つめたまま固まりました。
“みよし”……いや、“由美”。そう気づいた瞬間、背筋が冷たくなりました。
その夜、夫はご機嫌で帰宅。「ただいま〜」と軽い声。
「お仕事、どうだったの?」と聞くと、夫はにこにこしながら言いました。
「いや〜、今日もめちゃくちゃほぐれたよ〜」
——ん? ほぐれたよ? 私が聞いたのは“仕事”でしょ。なぜそんなに楽しそうに話せるの? Mさんは心の中で突っ込みました。
怒りと疑いが交差して、思わず声が震えました。
「美由(みよし)整体があれば休日出勤も余裕ですね! あれ、由美(ゆみ)整体だったっけ?」
「なんで名前」と、夫の声がわずかに震えています。
すかさず、Mさんが矢継ぎ早に言いました。
「ねぇ、整体って嘘でしょ。由美でしょ?」
夫は真っ青な顔で、おでこにはうっすら汗がにじんでいました。
「ごめん、軽い気持ちだったんだよ」と、うつむきながら小さく答えました。
「どういうこと? 説明しなさいよ!」
誰も幸せにしない
問い詰めた結果、整体は嘘で、由美さんと不倫していたことが判明。しかも由美さんも既婚者。双方から慰謝料が発生し、関係は泥沼化しました。
夫は「軽い気持ちだった」と釈明しましたが、Mさんの信頼はもう戻りませんでした。
「整体で“ほぐれた”なんて、よくそんな嘘を平気で言えたなって……今でも信じられません」
そう語るMさんは、今もまだ夫と同じ家で暮らしています。でも気持ちは前のようには戻らないそうです。
夫と笑い合ったあの時間も、嘘だったのか、Mさんはまだ、答えを出せずにいるようです。
【体験者:30代・会社員、回答時期:2024年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:神野まみ
フリーランスのWEBライター・コラムニスト。地域情報誌や女性向けWEBメディアでの執筆経験を活かし、医療・健康、人間関係のコラム、マーケティングなど幅広い分野で活動している。家族やママ友のトラブル経験を原点とし、「誰にも言えない本音を届けたい」という想いで執筆を開始。実体験をもとにしたフィールドワークやヒアリング、SNSや専門家取材、公的機関の情報などを通じて信頼性の高い情報源からリアルな声を集めている。女性向けメディアで連載や寄稿を行い、noteでは実話をもとにしたコラムやストーリーを発信中。