筆者の話です。
父が亡くなったとき、親族から「実家の墓所内にお墓を建てては」と提案されました。
しかし私たちは、父が生前選んだ場所にお墓を作ることを決意。
その後の伯母のひと言で、この選択が正しかったと心から思えたのです。

父のこだわりと私たち家族の思い

父は次男で末っ子、私たち家族が地元に住み、墓守や近所づきあいを担当。
一方、法事や仏壇などは、長男である伯父が、別の県に住みながら中心となって管理していました。

父は生前から「いずれは自分の墓を」 と考えており、実家と同じ霊園内の離れた区画に自分たち用の墓所を購入。
私たちはお参りや掃除のことを考え、もう少し実家の墓所に近い区画に変更できないかと相談したこともありましたが、父は「海が見えるここがいい」 と譲らず、結局そのままに。
そんな矢先、父が急逝しました。

伯父伯母からの思わぬ提案

お通夜後、父とのお別れの席で、伯父と伯母から思いがけない提案がありました。
「実家の墓所に一緒に入れたらどうかしら?」
確かに、父の実家の墓所には空きスペースがあり、もう一基建てられなくもありません。
しかし、すでに十基を超える石塔が立っています。

私と弟、伯父の子どもたちは全員結婚しておらず、いずれは永代供養の問題が出ることも見えていました。
伯父伯母としても、実家のお墓をまとめていきたいという思いがあったのだと思います。

家族で出した決断

私たちは改めて家族で話し合いました。
父が生前「ここがいい」 とこだわったこと、そして「掃除や管理は私たちが元気な間きちんとやる」 と決めていたこと。
伯父伯母の申し出はありがたく思いつつも、最終的に父の意志を優先し、お断りすることにしました。

今だからこそ思うこと

その後もお墓参りや掃除は続けていますが、父の実家の墓とは適度な距離を保つようになりました。

最近、伯母がふと「実家の墓、永代供養にするには家が建つくらいお金がかかるんじゃない?」 とこぼすのを耳にしました。
このままだと、いずれ遠方に住むいとこたちが墓じまいをしなければならなくなるのが気になってきたようです。

親の意思を守ったこともそうですが、地元に住む私たちにとっては、あの決断が後々の負担を軽くしてくれた気もしています。
もちろん協力する気持ちはありますが、あのとき、父の気持ちを尊重して本当に良かった。
今、心からそう思っています。

【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。