わが子のことは親である自分が1番よく分かっているはず。そう思っていても、自信がなくなってしまうこともありますよね。そんなとき、子どもの何気ない言葉や笑顔は大きな支えになるはずです。今回は友人のエピソードをご紹介します。

娘のためだけのお弁当

去年の運動会、私は小学3年生の娘のために、心を込めてお弁当を作りました。
見た目はちょっぴり茶色が多め。お世辞にも彩り豊かとは言えません。
でも、好き嫌いの多い娘が喜んで食べられる好物だけを選んで詰めた、世界に1つだけのお弁当です。
彩りや映えよりも、お弁当を食べた娘が笑顔になれて、少しでも楽しく運動会に臨めるように……そんな気持ちを込めました。

もちろん普段なら彩りや栄養バランスも気にしますが、年に1度の運動会くらいはいいだろうという気持ちもありました。

飛び込んできた、義母の豪華弁当

しかし運動会当日、朝のバタバタの中、近所に住む義母がアポもなく突然訪ねてきました。
そして、私のお弁当を見た瞬間、「あら~彩りが地味ねぇ。茶色ばっかりじゃない」とポツリ。

さらには、手作りの立派な二段弁当をドンと披露し、「こっちの方が写真映えするわよ♪」と、にっこり。
夫までも「わ! すごいじゃん母さん!」と声をあげ、私は思わず苦笑い。
勝ち負けではないことは分かっていても、胸の奥がチクンと痛みました。

娘のやさしいひと言

そんな私の心を救ってくれたのは、娘でした。
娘は、私の作った茶色いお弁当を指差して、ニコニコしながら「でも私はママが作ってくれたお弁当がいい!」と言ってくれたのです。

理由を聞くと、「だって、ママが私のこと考えて作ってくれたんだもん!」と、真っ直ぐな笑顔。
たったそれだけなのに、涙が出そうなくらい嬉しかったのを覚えています。

大切な気持ちを忘れずに

豪華で彩り豊かなお弁当を作れる義母のことを「すごいな」とは思いますが、私は私のやり方で、これからも娘の「好き」を、小さなお弁当箱にたくさん詰め込んでいこう。そう心から思えた出来事でした。

誰かと比べなくてもいい。私が心を込めて作るものが、娘の心にちゃんと届くなら、それで十分!
娘のおかげで、そんなふうに肩の力がふっと抜けた気がしました。

【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2025年4月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。