マダムのたしなみは「口紅」
N子さんの母は、70代になっても身だしなみをしっかりと整える素敵な女性でした。「口紅さえ塗っていれば、鏡の中の自分と友達でいられるの」が口癖で、毎朝欠かさずリップを引くのが日課。その姿勢に、N子さんも尊敬の気持ちを抱いていました。
こっそり塗った“小さなレディ”
ある日、3歳の孫娘がN子さんの母の部屋で、そっとお気に入りの口紅を塗っていました。鏡の前で一生懸命背伸びをしながら真似する姿に、思わず笑ってしまったN子さん。でも、「勝手に使っちゃだめでしょ」と軽く注意すると、孫娘はムッとした顔で言ったのです。
胸に刺さった、たった一言
「だって、ばあばみたいにキレイになりたいの」
その言葉に、N子さんとN子さんの母は思わず動きを止めました。いつも「もう年だから」と自虐気味だったN子さんの母は、目に涙を浮かべて「そう? キレイだと思ってくれるのね」と孫をぎゅっと抱きしめました。
世代を超えてつながる美しさ
それ以来、N子さんの母は「どうせ年だから」ではなく、「まだまだ孫に憧れられる存在でいたい」と前向きにおしゃれを楽しむように。孫娘は「おしゃれごっこ」が大好きになり、毎朝2人で鏡の前に並ぶのが日課に。N子さんの母も、昔使っていたドレッサーを引っ張り出しては、「これはばあばが若い頃にね」と孫娘に思い出話を語るようになったそうです。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:池田みのり
SNS運用代行の職を通じて、常にユーザー目線で物事を考える傍ら、子育て世代に役立つ情報の少なさを痛感。育児と仕事に奮闘するママたちに参考になる情報を発信すべく、自らの経験で得たリアルな悲喜こもごもを伝えたいとライター業をスタート。