子どもを連れてスーパーで買い物中、理不尽な嫌がらせを受けた、筆者の友人で主婦の直美(仮名)さん。怖くて声をあげられなかったとき、見知らぬ人たちがそっと寄り添ってくれた――。今回は筆者の友人・直美さんが体験した、心が救われた出来事を紹介します。
耳元で……
ピッ、ピッとセルフレジの音が響く。
客の少ない時間帯、直美さんは、3歳になる娘と一緒に、小さな手を引きながら商品を通していました。
やってみたいとねだる娘に「3つだけね」と限定させ、バーコードにかざした後「上手にできたね」と娘に声をかけました。
娘と一緒に買い物をするのも、育児の大切な時間。社会勉強の1つになればと、成長をうれしく感じながら過ごしていたと言います。
そのとき、不意に耳元で、低くつぶやく声が聞こえました。
「早くしろよ、ノロいな」
何が起きたのか、直美さんはすぐにはわかりませんでした。ただ、心臓がドクンと跳ねた、その瞬間だけは、今もはっきり覚えていると言います。
背中に感じる恐怖
「すみません」直美さんは、怒りと恐怖を胸に抱えながら、3歳の娘の手を握り「後はお母さんがやるね」と、レジ作業を続けていました。
一刻も早くこの場を抜け出したい――そんな思いで、震える手を動かしていたのです。