職場の人間関係は、仕事のパフォーマンスに直結する大切な要素。でも時には、その関係を乱す困った人物が現れることもあります。今回は、筆者の友人が経験した【忘れられない後輩】とのエピソードをご紹介します。

頼りになる後輩

私の勤める会社に、M田さんという後輩が配属されてきたのは、今から半年ほど前のこと。
20代半ばで明るく愛想も良く、「先輩、それ私がやっておきますね!」と、仕事にも前向きな姿勢。私も最初は、「良い子が入ってくれて助かったなあ」と思っていました。

同僚たちの間でも、「M田さん、気が利くよね」「感じ良いよね」と評判は上々。
周囲の評価も高く、職場の雰囲気もなんとなく和やかになっていたように感じていたのですが……。

上司からの言葉に驚き

ところがある日、上司から思いがけない言葉をかけられました。

「M田さんがね、『先輩のフォローが大変なんです』って言ってたけど……君、最近どうしたの? 何か悩みでもある?」

え? フォローが大変? 私の?

「段取りが悪くて手がかかるって言ってたよ。いつもは優秀な君らしくないなって思ってさ」と、笑い混じりに言う上司。

私は頭が真っ白になって、何も返せませんでした。
あんなに感じ良く接してくれていたM田さんが、裏でそんなことを言っていたなんて、まったく想像もしていなかったからです。

真実の究明

何がどうなっているのか、さすがに気になって、私は自分の業務記録やメールをすべて見直しました。
どの仕事を誰が担当していたのか、何をいつ頼んだのか、できる限り洗い出して一覧にまとめ、それを資料として上司に提出しました。

調べていくうちに分かったのは、M田さんが私の小さなミスや言動を、都合よく大げさに話していたこと。

さらに驚いたのは、「自分は先輩のサポートで仕方なく残業している」という体で、ちゃっかり残業代まで稼いでいたことです。

笑顔の裏にあったのは

私の提出した資料に目を通した上司の顔色がサッと変わりました。
翌日からM田さんは上司の近くの席に移動になり、仕事の進捗を逐一チェックされるように。

彼女が「先輩のフォロー」と称していた作業の多くが、実際には彼女自身の担当業務だったことも、記録の照合で明らかになりました。

感じのいい後輩だと思っていたのに、まさか裏で私を“仕事のできない先輩”に仕立てていたなんて……。
あの笑顔を思い出すと、今でも背筋がゾッとします。

人は見かけだけじゃ分からない。本当にそう痛感した出来事でした。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年3月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。