妹さんは……
Nさんは40代の現役医師です。夫とは大学時代からの友人で、共通の知人の結婚式で再会したことをきっかけに、交際へと発展しました。仕事が多忙だったこともあり、結婚は少し遅くなりましたが、お互いを思いやる穏やかな関係を築いてこられたそうです。
ただ、ひとつだけ気になっていたのが、夫の義妹の存在でした。
兄である夫には何かと甘えながらも、Nさんには日頃から対抗心をむき出しにしてきます。
特に義実家で顔を合わせるたび、チクリと刺すようなひと言を冗談めかして口にするのです。
「元カノの方が家庭的だったよね」「あの子の方が似合ってた」——そんな言葉に、Nさんはいつも笑顔を浮かべながら、そっと胸の奥で受け流していました。
「またか……」
心の中でそうつぶやく瞬間が、もう何度あったか数えきれません。
止まらない義妹の“元カノ攻撃”
義実家での食事中、義両親とNさん夫婦が美味しかったレストランの話で盛り上がっていたときのこと。「あそこの前菜、絶品だったわよね」と和やかに会話が弾む中、義妹がふいに口を開きました。
「そういえば……元カノも和食に詳しかったよね」
場の空気が一瞬だけ止まったように感じたけれど、誰もその言葉には触れませんでした。家族の思い出話になると、「前の彼女は、よく実家に来てたのに」と、まるで話題に水を差すように義妹は言ってくるのです。
明らかにNさんへの当てつけ。でも、誰も咎めようとしません。夫も、義両親も——聞こえているはずなのに、気づかないふりをして話題をそらそうとするだけでした。
その沈黙が、Nさんの心をじわじわと冷やしていきました。
「私さえ我慢すれば」と飲み込んできた言葉が、もう喉の奥に引っかかって、苦しくなり始めていたのです。
やっぱり、私って“よそ者”なのかな。
そんな思いが、ふと胸をかすめました。
夫の一言が、空気を変えた
義実家でのある日の夕食。テーブルを囲んで談笑していたその最中、義妹はいつものように、何気ない調子でまた口にしました。
「やっぱりさ、元カノの方が可愛かったよね〜」