不信感を抱いていた私でしたが、結婚後に母の本音を聞いて──。
突然のお見合いラッシュ
高校を卒業して社会人になった私。
成人式を過ぎたあたりから、母は急にお見合いの話をすすめてくるようになりました。
当時のスナップ写真を勝手に使って釣書を作らされ、母の友人や職場の同僚、親戚などに
「いい人がいたらぜひ」
と配って回る母。
さらに
「〇月〇日、お見合いだから」
と一方的に予定を告げられ、相手の写真と釣書を手渡されることもありました。
母にとっては当たり前のことでも、私にとっては驚きの連続でした。
「追い出されるの?」という思い
母はことあるごとに
「私はあなたの歳には、もうあなたを産んでいたよ」
と言いながら、結婚を急かしてきました。
そんな母の姿に、私はだんだんと
「そんなに私のことが嫌いなの?」
「家から追い出したいの?」
と、不信感を募らせていったのです。
お見合いの話があるたびに心がざわつき、断るたびに罪悪感が残る──。
母の気持ちがわからず、素直になれない自分にも悩んでいました。
何度かお見合いをしましたが、どれもご縁がなく、私は27歳で恋愛結婚をすることになりました。
母に聞いた「あの頃の気持ち」
結婚が決まったタイミングで、思い切って母に聞いてみました。
「ねえ、あのときどうしてあんなにお見合いをすすめてきたの? 私のこと、追い出したかったの?」
すると母は目を丸くしながらこう言ったのです。
「私は若いうちに結婚して、子育てを早く終えたから、自分の時間を長く持てた。それがすごく良かったと思ってるの。あなたにも、早くそうなってほしかっただけなのよ」
すれ違いの思いに、笑いあえた日
母は「いいことをしている」 と信じてすすめていたのだそうです。
私が「嫌われたと思ってた」 と伝えると、母はとても驚いていました。
「まさか、そんなふうに思っていたなんて」
と少し寂しそうな顔をしていたのを、今でも覚えています。
話してみないと気持ちはわからない。
ようやくお互いの気持ちが伝わり合って、数年越しの心のわだかまりが消えたのでした。
今ではあのやりとりも、笑って話せる大切な思い出です。
【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。