本堂の階段に戸惑ったけれど
母は一人での日常生活が難しく、数年前から施設に入所しています。持病はあるものの、体調は安定しており、外出の許可が出ることもあります。今回は父の10回忌に参加させたいと、介護タクシーを貸し切りでお願いしました。
父の墓所は島にあり、菩提寺にはスロープがありません。本堂の入口には急な階段があり、正直、母をどうやって上げるか悩んでいました。(弟が背負うしかないかな) と話していたところに、運転手さんが声をかけてくださったのです。
想像以上のサポートに感動
「一緒にお手伝いしますよ」
そう言って、弟と協力し車いすのまま母を本堂まで運んでくれました。法要が終わる頃には、再びタイミングよく現れて、今度は本堂から下りの階段、タクシーまで丁寧にアテンドしてくれたのです。
乗り降りの際には
「おかあさん、乗りますよ」
と穏やかに声をかけてくれ、母の表情も自然と和らいでいました。
その様子を見て(ああ、だから母は介護タクシーを希望していたんだ) と納得したのです。
レンタカーで感じた【心もとない不安】
実はこれまでに、介護レンタカーを借りて、私たち姉弟で母を連れて出かけたこともあります。しかし、乗降のたびに「使い方、ほんとにわかってるの?」 と母に不安げに聞かれることがあり、私たちの慣れない対応に母は緊張していたようです。
ある時、レンタカーを借りられないことがあり、介護タクシーをお願いすると、母はそのサービス度の高さに安心を覚えたようでした。以後は「お出かけは介護タクシーがいい」 と言うようになったのです。
運転にもあらわれる【思いやり】
「母は車に酔いやすいんです」
と伝えると、運転手さんは急発進や急ブレーキを避け、静かに走ってくれました。その気づかいがうれしくて、母も落ち着いて乗っていられたようです。
母を送った帰り道、運転手さんから「介護タクシー勤務には専門の研修がある」と聞き、納得しました。丁寧な対応が自然と身についているのも、そのおかげなのかもしれません。
本当にありがたい存在だなと、改めて感じました。
【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。