自分の新たな一歩へ
私は義母と何十年も同居し、仕事もしながら、3人の娘を育てました。
義母が亡くなり、子どもたちが結婚や就職で巣立ったことを機に、以前から興味のあった地域ボランティアに参加することに。
着物の着付けで広がる地域とのつながり
ボランティア活動に関わるうちに、私の「得意」を活かせる場面を見つけたのです。
それは、着物の着付け。私は着物の着付けができるので、地域で開催される着物に関連したイベントに呼ばれたり、自分でも着物を着て参加したりするようになりました。
そこで出会った人たちとさらに交流を深めていき、誰かに頼られることがとてもうれしくて、あちこち飛び回る日々を送っていました。
「運転手」を名乗る夫の同行
ある日、私と同じタイミングで定年退職した夫が、「おれが運転してやるよ」と言い出し、私の“運転手”をかって出たのです。
私はその申し出を素直にありがたく受け入れ、その日は予定していたすべての移動を夫に任せることにしました。
ところが、それをきっかけに、夫は私の行き先すべてに「運転手」として付き添うようになったのです。
最初は助かると思っていたものの、次第に夫がどこへ行くにもついてくるようになり、私がこれまで丁寧に築いてきた人間関係にまで首を突っ込まれるような気持ちに。
正直なところ、居心地の悪さを感じるようになりました。
夫が一緒だと、私の活動先で「妻が迷惑をかけていませんか?」などと余計な口出しをすることも嫌でした。
夫の本音
それからも夫は、「暇だから」「時間があるから」と言いながら、運転手を名乗って私の訪問先についてくることが増えていきました。
ある日、私は思い切って「何か自分でもやりたいことを見つけてみたら?」と夫に言ってみました。
すると夫は、「今まで仕事しかしてこなかったから、今さら何か見つけるのは難しいんだよな」と、ぽつりとつぶやいたのです。
今まで家族のために一生懸命働いてくれた夫には、本当に感謝しています。でも、会社を定年退職し、夫が自分の新しい「居場所」を見つけるのは、なかなか難しいようです。
【体験者:60代・主婦、回答時期:2025年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Yuki Unagi
フリーペーパーの編集として約10年活躍。出産を機に退職した後、子どもの手が離れたのをきっかけに、在宅webライターとして活動をスタート。自分自身の体験や友人知人へのインタビューを行い、大人の女性向けサイトを中心に、得意とする家族関係のコラムを執筆している。