エスカレートする嘘
息子が5歳の頃、些細な嘘をつくようになり、私は悩んでいました。
最初は、おもちゃを片付けていないのに「片付けたよ」と言う程度だったのですが、次第に嘘の回数が少しずつ増えていき、事実とは異なる話をさも真実のように話すようになったのです。
私は最初、息子がなぜ嘘をつくのか理解できませんでした。
叱っても、諭しても、効果がない。息子が嘘をつくたびに、どうしたらいいか分からず、気持ちが沈んでいきました。
幼稚園の先生からの助言
ある日、私は息子の幼稚園の先生に相談してみることにしました。
先生は、「息子さんはとても感受性の強いお子さんです。もしかしたらお母さんに褒めてもらいたくて、嘘をついているのかもしれません」と優しく言ってくれました。
さらに先生は、「悪気はなくて、ただお母さんが喜んでくれることが嬉しいのだと思います。嘘をついた時には頭ごなしに叱るのではなく、なぜそんな話をしたのか、気持ちを理解しようと努めてみてください」とアドバイスをくれました。
嘘の原因
その話を聞いて、私はハッとしました。
息子が嘘をつくようになる直前の【ある出来事】を思い出したのです。
数週間前のことでした。
息子の友達が我が家で遊んだ時に描いて置いていった絵を、私は息子が描いたと勘違いして、「すごいね!」と大喜びしてしまいました。
息子は私が喜んでいるのを見て、自分が描いたわけではないのに「うん、僕が描いたんだ」と嘘をついてしまったのです。
信頼関係を築く
原因に気づいた私は、先生の言葉を胸に、息子への接し方を変えてみました。
嘘をついた時でも叱らず「本当はどうだったの?」と優しく聞き、息子の気持ちを汲み取るように努めました。
そして、息子が良い行いをしたり、努力している様子を見せた時には、小さなことでも惜しみなく褒めてあげました。
すると徐々に、息子の嘘は減っていきました。
ある日、息子は友達と喧嘩をして、おもちゃを壊してしまったことを正直に私に話してくれました。
「本当は隠そうと思ったけど……ママ、怒る?」と不安そうに尋ねる息子に、私は「正直に話してくれてありがとう。喧嘩は良くないけど、正直に話してくれたことは偉いね!」と抱きしめました。
息子はホッとした様子で、後日私とともにお友達のところへ謝罪に行きました。
嘘をつかせないことよりも、子どもが安心して真実を話せるような信頼関係を築くことの方が大切だと実感した出来事でした。
【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2025年1月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。