舞い上がった心が、一気に冷める
その数日後、保育園でまたママ友と顔を合わせたときのこと。
軽く挨拶を交わしたあと、ふと思い出したように彼女が声をかけてきました。
「そうそう、この前の服ね」と始まり、「ちなみに、二万九千円だから」とさらりと値段を告げられたのです。
「え?」と息を呑んだRさん。プレゼントだとばかり思っていたのに、サイズが合わなかったので買い取ってもらおうとしていたとは。嬉しかった気持ちが、一気に突き落とされたようでした。さらに「タグにお値段あったでしょ?」と悪びれず笑顔で続けるママ友。
まさかの請求に嬉しさが音を立てて崩れ、頭の中がぐるぐると混乱し、ありえないでしょ! と心の中で叫びたくなりました。
トホホ。なんで私が悪者に?
気が動転したRさんは、とっさに「ごめんなさい、そういうことでしたか。まだ着ていないので、お返ししますね」と言いました。
なんで私が謝ってるんだろう、トホホ……と情けなくなる気持ちでいっぱいです。
後日、逃げるように紙袋を返したところ、ママ友は「はあ〜? せっかく渡したのに!」と不満げな顔。こちらが悪いことをしたみたいな雰囲気に、胸がきゅっと締めつけられます。
それでも関わりたくない一心で返したRさん。あとから考えるほどに、じわじわ腹立たしさがこみ上げてきました。
どうして私がこんな思いをしなくちゃいけないのか。悔しさがにじむようでした。
出会いは大切に、距離はほどほどに
その一件以来、そのママ友とは必要以上に関わらないようにしていると、Rさんは話してくれました。顔を合わせても会釈だけで、会話はほとんどないそうです。
学生のころみたいに、友人と気を許して笑い合うなんて、もう無理なのかな……。そう思うと、なんだか寂しくなってしまいます。
ママになってからの人付き合いは思った以上に難しい。だからこそ、無理に踏み込みすぎない距離感が大切だと、今回の出来事で痛感したそうです。
【体験者:30代・会社員女性、回答時期:2023年2月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:神野まみ
フリーランスのWEBライター・コラムニスト。地域情報誌や女性向けWEBメディアでの執筆経験を活かし、医療・健康、人間関係のコラム、マーケティングなど幅広い分野で活動している。家族やママ友のトラブル経験を原点とし、「誰にも言えない本音を届けたい」という想いで執筆を開始。実体験をもとにしたフィールドワークやヒアリング、SNSや専門家取材、公的機関の情報などを通じて信頼性の高い情報源からリアルな声を集めている。女性向けメディアで連載や寄稿を行い、noteでは実話をもとにしたコラムやストーリーを発信中。