以前働いていた会社で、頻繁に起きていた盗難事件、人のものを平気で盗む誰かと一緒に仕事をしているのかと思うと、背筋がゾッとしました。
セキュリティ万全のはずの社内で
勤務先は、4階建ての自社ビル。
ビル全体が会社所有で、出入りできるのは社員のみ。
外部の人間が入り込む余地はありませんでした。
各フロアの入退室には、セキュリティーカードが必要でした。
一方で、共用の休憩室やロッカーエリアには入退室制限がなく、誰が出入りしたかの記録も残らないつくり。
当時は、防犯カメラもまだ設置されていませんでした。
止まらない盗難、私もついに
ビル内には常時300人ほどの社員が勤務。
ロッカーは各階にありましたが、スペースの都合で自分の執務フロアとは別の階のロッカーを利用している人も多くいました。
鍵の管理は本人と人事部だけでしたが、鍵をかけ忘れたロッカーから財布が盗まれるという事件が何件も発生。
中には、仕事終わりの予定に合わせて持ってきた高級なコートを盗まれた人もいました。
「また何か盗まれたらしい」――そんな声が日常的に飛び交っている職場。
私も気をつけていたのですが、ある日、休憩室の机にうっかり財布を置き忘れてしまったのです。
気づいて10分ほどで戻ったのですが、もうどこにも見当たりません。
社内を探し、周囲に確認し、全体メッセージまで送ってみましたが、結局見つかりませんでした。
交番でかけられた一言
あまりに悔しく、翌日、近所の交番に相談に行くことに。
しかし、そこで警察官にかけられた一言に、言葉を失いました。
「またおたくの会社ですか?」
私以外にも、同じような相談をしに来た人が何人もいたようなのです。
ようやく会社が動き始めた
その後も盗難は続き、ついに会社は対策に乗り出しました。
廊下や休憩室など、共用スペースに防犯カメラが設置され、それからは目に見えて被害が減っていきました。
けれど、私の財布が戻ってくることはなく、誰が盗ったのかもわからないまま。
外部の人間が入れないはずの社内で、いったい誰が――。
そう思った瞬間、背筋がぞっとしました。
「一番怖いのは人間だ」と思うようになった出来事です。
【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。