筆者の友人・Mは40代後半で大病を経験しました。その後両親を亡くしたことから「いつ何があってもおかしくない」と言い、終活を始めていました。生前整理として不要品を処分したり、エンディングノートを作ったりしていたのですが……。

すると、どうやら電話で話していた私の声が聞こえたらしく、電話を切ると夫がいきなり部屋に入ってきてこう言いました。
「あのさぁ……終活は大事かもしれないよ。でも、楽しそうに終活をしているお前を見ているこっちはたまらない気持ちになるんだ。お前が病気した時、死ぬかもしれないと思った俺の気持ちが分かるのか?」

本音

このセリフを聞いた私は、今までの夫の対応に合点がいきました。
病気で入院・手術をした時も、終活で不要品の整理をしていた時も、夫は私がいなくなるかもしれないという恐怖と闘っていたのでしょう。

夫は私を失いたくないと思っていたのに、上手く言葉にできなかっただけ。
「死を覚悟して生活しているお前を見るのは本当に辛かった。」とも言いました。
私は夫ときちんと話し合い、別に死にたいと思っているわけではないこと、両親の死後自分が大変な思いをしたから少しでも家族の負担を減らそうと思っていたことを伝えたのです。

夫は私の言葉を聞いて、ようやく「そういうことなら何かあれば手伝うから。」と言ってくれました。
長年連れ添っている夫婦でも、話をしないと相手の気持ちはわからないものなんだと思い知らされた出来事でした。

【体験者:50代女性・主婦、回答時期:2025年3月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:RIE.K
国文学科を卒業し、教員免許を取得後はOLをしていたが、自営業の父親の病気をきっかけにトラック運転手に転職。仕事柄多くの「ちょっと訳あり」な人の人生談に触れる。その後、結婚・出産・離婚。介護士として働く。さらにシングルマザーとして子供を養うために、ファーストフード店・ショットバー・弁当屋・レストラン・塾講師・コールセンターなど、さまざまなパート・アルバイトの経験あり。多彩な人生経験から、あらゆる土地、職場で経験したビックリ&おもしろエピソードが多くあり、これまでの友人や知人、さらにその知り合いなどの声を集め、コラムにする専業ライターに至る。