これは、筆者の知人A子さんから聞いたエピソードです。
育児に疲れたとき、本当は誰かに助けを求めたいのに頼れる相手がいない。そんな孤独な子育ての日々で「なにかあったら頼ってね」と優しく声をかけてくれる存在は、どれほど心強いことでしょう。A子さんも、そのひと言に救われたひとりでした。
けれど、ある日ふと届いた夫からのメッセージに、目を疑いました。信じていた人たちの裏切りに気づいた瞬間、声が出ませんでした──。

やさしさの裏に潜んでいたもの

帰宅途中、A子さんはいつものようにスマホを手に取りました。ふと夫からのメッセージが目に入り、何気なく開いた瞬間、血の気が引きました。

「ともちゃん(仮名)おつー! 今月は6日ね。この前のチェリーでいい?」
ともちゃん──それは、ママ友の名前でした。しかもその6日というのは、夫が飲み会で帰りが遅くなると言っていた日だったのです。
どうやら、夫はメッセージを誤送信したようです。震える指でスクロールすると、日付や場所のほか、二人だけが知る親しげな内容が送られてきていました。画面を追うたびに息が詰まり、冷たい汗がにじみます。

帰宅後、夫に問いただすと、しばらくの沈黙のあと「ごめん」としぼり出すように答えました。そのひと言が、すべてでした。夫とママ友は、半年以上も関係を続けていたのです。A子さんは膝を震わせ、スマホを握りしめたまま、ただ呆然と立ち尽くしていました。

裏切りの先に見つけた強さ

信じていたふたりに背を向けられる痛みは、想像以上でした。しばらくは悔しさと悲しさで胸が押しつぶされそうだったといいます。それでも、A子さんは前を向きました。
仕事に打ち込み、新しい資格にも挑戦。努力を重ね、念願のキャリアアップを手に入れました。自信を取り戻すなかで、「もう、裏切りに振り回されるのは終わり」と思えるようになったそうです。

「私は、私の力で進んでいきます」
そう話すA子さんの表情は、晴れやかでした。痛みは消えなくても、それすらを糧にして歩き続ける強さが、彼女にはありました。

【体験者:30代・会社員女性、回答時期:2022年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:神野まみ
フリーランスのWEBライター・コラムニスト。地域情報誌や女性向けWEBメディアでの執筆経験を活かし、医療・健康、人間関係のコラム、マーケティングなど幅広い分野で活動している。家族やママ友のトラブル経験を原点とし、「誰にも言えない本音を届けたい」という想いで執筆を開始。実体験をもとにしたフィールドワークやヒアリング、SNSや専門家取材、公的機関の情報などを通じて信頼性の高い情報源からリアルな声を集めている。女性向けメディアで連載や寄稿を行い、noteでは実話をもとにしたコラムやストーリーを発信中。