これは、筆者の知人A子さんから聞いたエピソードです。
育児に疲れたとき、本当は誰かに助けを求めたいのに頼れる相手がいない。そんな孤独な子育ての日々で「なにかあったら頼ってね」と優しく声をかけてくれる存在は、どれほど心強いことでしょう。A子さんも、そのひと言に救われたひとりでした。
けれど、ある日ふと届いた夫からのメッセージに、目を疑いました。信じていた人たちの裏切りに気づいた瞬間、声が出ませんでした──。

疲れた心を救ってくれた言葉

第二子出産後、A子さんは毎日疲れ切っていました。共働きで、仕事と家事育児に追われる日々。夜は下の子の夜泣きで眠れず、気がつけば笑顔が消えていたのです。

そんなある日、保育園の送り迎えで顔を合わせるママ友が声をかけてくれました。
「育児、大変だよね。なにかあったら頼ってね」
そのやさしいひと言が、カラカラに乾いた心に染みて、思わず涙がにじみました。話すうちに気持ちが軽くなり、共働き同士だからこそ悩みを分かち合える。気づけば「この人になら、何でも話せる」と思うようになっていました。

信じた友情のはずが──

送り迎えで顔を合わせるたび、A子さんはほっとした気持ちになっていました。「お疲れさま」と声をかけ合うだけでも、心が少し楽になるのです。
関係は次第に深まり、家族ぐるみで交流するように。週末は一緒に出かけるうちに、二つの家族が自然と打ち解けていきました。

その頃から、夫が少しずつ変わりはじめました。忙しさを気遣う言葉が増え、育児にも前より積極的になったのです。A子さんは「ママ友のおかげかな」と感じ、ますます信頼を寄せるようになりました。

けれど、ふと胸がざわつく瞬間がありました。夫とママ友の視線が絡むたび、妙な違和感が残るのです。冗談のトーンや気まずそうな仕草……気のせいだと思い込みながらも、心のどこかで「まさか」という予感が膨らんでいきました。