これは、筆者の当時6歳の息子が公園で体験したエピソードです。滑り台で割り込んできた親子に、息子が放った“ひと言”が思いがけずその場の空気を変えました。大人もハッとするような、小さな勇気が感じられる場面です。

静かに届いた、6歳の“まっすぐな声”

その空気を変えたのは、小さな存在でした。
列の少し後ろに並んでいた私の息子が、前を見据えたまま、ぽつりと言ったのです。
「順番、守れない子は、ヒーローになれないよ」
声を張ったわけでもなく、怒鳴ったわけでもありません。
けれど、その言葉は不思議と周囲にスッと届き、誰もが一瞬、動きを止めました。

割り込んできた男の子は、きょとんとした顔で息子を見つめ、それからゆっくりと列の最後尾に戻っていきました。
母親は気まずそうに苦笑いを浮かべていましたが、何も言わず、そのまま立ち尽くしていました。

私はそのやりとりを見ながら、胸の奥がじんわりと熱くなっていくのを感じました。
あの子なりの正義感。そしてそれを口にする強さ。
小さな背中が、とても大きく見えました。

小さなヒーローに教わった“気づき”

帰り道、手をつないで歩いていると、息子がぽつりとつぶやきました。
「ちゃんと並んでたのに、みんなかわいそうだったよ」
その言葉に、私は思わずジーンときて、「そうだね」とだけ答えました。

息子にとっての「正しい」は、とてもシンプルで、まっすぐなものなんだなと感じました。
誰かが困っていたら助けたい。悲しそうだったら、伝えたい。
その気持ちが、まっすぐに言葉になったんだと思います。

あのとき、あの場所で、一番勇気を出したのは、きっと息子でした。
小さな手を握りながら、「子どもの成長って、ほんとうにすごいな」としみじみ思いました。
あの日、公園で一番かっこよかったのは、私の6歳の小さなヒーローでした。

【体験者:40代・筆者、回答時期:2025年3月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:神野まみ
フリーランスのWEBライター・コラムニスト。地域情報誌や女性向けWEBメディアでの執筆経験を活かし、医療・健康、人間関係のコラム、マーケティングなど幅広い分野で活動している。家族やママ友のトラブル経験を原点とし、「誰にも言えない本音を届けたい」という想いで執筆を開始。実体験をもとにしたフィールドワークやヒアリング、SNSや専門家取材、公的機関の情報などを通じて信頼性の高い情報源からリアルな声を集めている。女性向けメディアで連載や寄稿を行い、noteでは実話をもとにしたコラムやストーリーを発信中。