なぜ伝わらない? 「お迎え時間」の壁
私の勤める学童は夜7時に閉所します。子どもたち全員が帰るのを見届けてから、学童の鍵を締めて私たちは帰り支度をします。
しかし、保護者のAさんは、いつもお迎えの時間を過ぎてやってきます。連絡もなく、15〜20分ほど遅れることは日常茶飯事。
保護者の方の事情はもちろん理解できます。仕事の都合や交通事情などさまざまあるでしょう。でも、直接お願いをしても、紙で全員に周知しても、Aさんの連絡なしの遅刻は直りませんでした。
職員が抱える「言えない本音」
ある日、Aさんがまたお迎えの時間を過ぎてやってきました。時計を見ると、もう夜7時20分。
私は心の中で「今日もか」と思いつつ、お子さんを引き渡しました。Aさんはいつものように「すみません、遅くなりました」と軽く謝りながら帰っていきました。
帰り支度をしながら、支援員同士「保護者に直接注意するのは難しいね」「強く言えば関係性が悪化するかもしれないし」「だからって放置していると、習慣化してしまうしね」と頭を悩ませていました。
しかしその翌日、驚くべきことが起きたのです。
子どものひと言で変わった、保護者の習慣
なんと、Aさんが7時ちょうどにお迎えに来たのです!
私は内心「どうしちゃったの?」と思いながらも、笑顔で対応。
すると、Aさんがこう言ったのです。
「昨日、子どもに『学童で、みんな帰ってるのに自分だけ残ってるのは不安になる。それに先生たちだって困るんだよ』って言われてしまって。子どもに怒られるなんて思ってもみませんでした。今まですみませんでした」と。
どうやら、お子さん自身が親に「お迎えはちゃんと時間通りに来て」と伝えたようでした。
子どもの言葉が生んだ、意外な変化
その日以来、Aさんはほぼ時間通りに来るようになり、私たち職員もホッと一安心。子どもの率直なひと言が、大人を動かすきっかけになったんだなぁと感心したのでした。
【体験者:40代・学童支援員、回答時期:2025年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Yuki Unagi
フリーペーパーの編集として約10年活躍。出産を機に退職した後、子どもの手が離れたのをきっかけに、在宅webライターとして活動をスタート。自分自身の体験や友人知人へのインタビューを行い、大人の女性向けサイトを中心に、得意とする家族関係のコラムを執筆している。