空の巣症候群?
50歳を迎えた私は、2人の娘を育て上げた達成感と同時に、心にぽっかり穴が空いたような喪失感を抱えていました。
子育て中心の生活から解放されたものの、自分の時間が増えたことに戸惑いを感じ、「これから何をしたらいいんだろう……」と漠然とした不安に襲われる日々を送っていたのです。
今思うと、いわゆる「空の巣症候群」の状態だったのかもしれませんね。
子どもの頃の憧れと再会
そんなある日のことです。近所のスーパーで「大人のためのバレエ教室」のチラシを見かけました。
子どもの頃バレエを習っていて、バレリーナに憧れていた私は、久しぶりに昔の夢を思い出しました。
「大好きだったバレエに挑戦すれば、喪失感も埋まるかもしれない!」
そんな希望が湧いてくるのを感じ、とりあえずチラシを持ち帰ったのですが……。
娘たちは大反対!
しかし、50歳からの新たな挑戦には不安もありました。
「もう体が硬くなってしまっているだろうし、レッスンについていけるだろうか……。それに、50歳でバレエなんて、みっともないかな」と躊躇してしまったのです。
娘たちに相談すると、2人とも大反対!
「えー! いい歳してバレエなんて恥ずかしいよ~」「どうせ続かないでしょ」と非難され、私の心は揺らぎました。
再び舞台へ
それでも、子どもの頃の夢を諦めきれず、私は思い切って教室の門を叩くことに。
久しぶりのレッスンは想像以上に大変でしたが、美しい音楽に合わせて体を動かす喜び、そして同じ目標を持つ仲間との出会いが、私の心に活力を与えてくれました。
そして1年後、発表会の日。
私に招待された娘たちも、渋々ですが会場へ足を運んでくれました。
「また『恥ずかしい』って言われちゃうかな?」と内心不安でしたが、スポットライトを浴びながら生き生きと踊る私の姿を見て、娘たちは目を見開いたそうです。
家事や子育てに追われる毎日の中で見失っていた、母の輝きを感じてくれたのでしょうか。発表会後、娘たちは「お母さん、かっこよかったよ!」と素直な気持ちを伝えてくれました。
50歳からの挑戦で、新たな自分を発見することができたのです。
【体験者:50代・女性主婦、回答時期:2025年2月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。