結婚準備のときに
それから10年。
結婚が決まり、退職することになりました。
結婚式や新生活の費用をどうしようかと考えていたとき、母が「ずっと貯めておいたお金よ」 と言って、通帳を差し出してくれたのです。
中を見ると、そこには300万円を超える金額が記帳されていました。
毎月3万円ずつ。
たったそれだけの積み重ねが、こんなにも大きな支えになるなんて――。
わかっていたはずなのに、目の前でその金額を見た瞬間、10年分の母の想いが胸に迫ってきたのです。
母の言葉の意味を知った
おかげで、結婚式や新婚旅行、新生活の準備まですべて自分たちでまかなうことができました。
親戚などからの結婚祝いと相殺しても、まだ余るほどの金額。
母は「新生活に取っておきなさい。これから何に必要になるかわからないから、大切に使うのよ」 と、私の背中をそっと押してくれました。
夫は転勤族だったため、私もすぐには働けない時期がありましたが「あのお金がある」 と思えるだけで、心がずいぶん軽くなりました。
口うるさいと思っていた母の一言が、10年後の私を助けてくれた。
あのとき素直に母の言葉を信じて、毎月手渡しを続けてきてよかった――そう心から思える、忘れられない出来事です。
【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。