元同僚Aの話です。Aは繁忙期の短期アルバイトとして一緒に研修を受けた同期。研修の時から電話での対応が苦手な人でした。
人気施設の予約受付、電話殺到
私たちは、宿泊予約を受け付けるカスタマーセンターで働いていました。夏休みの予約が始まると、電話が殺到するため、短期アルバイトが募集され、Aもその一人でした。
この日は特別料金で販売される人気施設の予約開始日。電話が特に混雑することが予想されていました。10時ちょうどに受付が始まると、電話・FAX・WEBで一斉に予約が入り、あっという間に満室になります。
言ってはいけない情報
Aが取った電話のお客様も、10時にかけたのに予約が取れなかったことに納得できず、クレームを訴えてきました。
「申し訳ありません」 と繰り返すA。しかし、相手は納得せず 、
「こんなにすぐ埋まるなんて、一体何部屋あるのよ!?」 と問い詰めます。
本来、部屋数は公表できない情報。Aも最初は「お答えできません」 と対応していましたが、焦ったのか、つい言ってしまいました。
「……3部屋です」
次の瞬間、電話口のお客様は激怒。
「そんな少ないなら取れるわけないじゃない! 上司を出して!」
結局、上司が対応し、なんとか収束しましたが、Aはすぐに別室へ呼ばれました。
上司に呼ばれた後、Aが見せた態度
私は 「あぁ、叱られるんだろうな……」と思いましたが、しばらくして戻ってきたAの様子は予想外でした。
Aは無言のまま勢いよく椅子を引き、大きな音を立てて座ると、置いてあった書類をバンっと机に打ち付けました。
明らかに納得していないような表情。誰も声をかけられず、その場の空気がピンと張り詰めます。
Aは大きくため息を吐くと席を立ち、引き出しからバッグを乱暴につかみました。
「ランチに行ってきます」
低い声でそう呟くと、Aは足音を響かせながら休憩室の方向へ歩いていきました。