「家族が病気にならないように」そんな想いで日々料理を作っていたA子。
しかし、子どもたちの反応は意外なものでした。
ある日、長男が放ったひと言が、A子の価値観を大きく揺るがします。
彼女が気づいた「本当に大切なこと」とは?
今回は筆者の知人A子が話してくれました。

家族の健康を想うあまり……

A子は幼いころに母を病気で亡くしました。

その経験から、「自分は絶対に健康でいなければ」と強く思うように。

食生活にも徹底的に気を配り、添加物やジャンクフードとは無縁の生活を続けていました。

結婚後もそのスタンスは変わらず、夫や子どもたちにも栄養バランスの整った食事を作る日々。

脂っこいものや甘いものはなるべく避け、体に良い食材を中心にしたメニューを考えていました。

しかし、その想いとは裏腹に、子どもたちからの評判は今ひとつ。

不満がちらほら聞こえてくるようになったのです。

初めてのハンバーガーショック

ある日、A子の10歳になる長男が友だちの家でハンバーガーをご馳走になりました。

その美味しさに感動した長男は、家に帰るなりA子に

「たまにはこういうご飯が食べたい!」

とお願いしました。

ところが、A子は

「体に悪いものはダメ!」

と即、却下。

健康を最優先するA子にとって、ジャンクフードは絶対にNGでした。

すると、長男は不満を爆発させ、

「お母さんのご飯は美味しくない!」

と言い放ったのです。

その言葉にA子は大きなショックを受けました。

本当に大切なことって?

しかし、冷静に考えてみると、自分は「家族のため」と思いながら、本当に家族の気持ちを考えていたのだろうか?

と疑問が湧いてきました。

母を早くに亡くしたことで「健康第一」にこだわりすぎていたのかもしれない。

そう思うと、これまでの自分のやり方を見直そうという気持ちが芽生えてきたのです。

バランスよく、そして楽しく

A子は、これまでの食事を少しずつ変えていくことにしました。

普段は栄養バランスを考えながらも、子どもが喜ぶメニューをできる限り取り入れるように工夫。

そしてたまに、ファストフードも家族で食べに行くようになりました。

その変化とともに、家族の会話も増えて、子どもたちも何だか嬉しそう。

A子は改めて気づきました。

健康も大事だけれど、それ以上に、みんなで美味しく楽しく食事を囲むことこそが、一番の幸せなのかもしれないと。

【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2025年1月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:Yumeko.N
元大学職員のコラムニスト。専業主婦として家事と子育てに奮闘。その傍ら、ママ友や同僚からの聞き取り・紹介を中心にインタビューを行う。特に子育てに関する記事、教育機関での経験を通じた子供の成長に関わる親子・家庭環境のテーマを得意とし、同ジャンルのフィールドワークを通じて記事を執筆。