1人暮らしを始めると、近所付き合いをどの程度するかが悩みどころですよね。一般的には挨拶程度の関係が理想かもしれませんが、中には過剰に干渉してくる困った人もいるようで……。今回は、筆者の友人裕子(仮名)が体験した出来事をご紹介します。

都会での出会い

隣の部屋に住む香織さん(仮名)と出会ったのは、私が都会で1人暮らしを始めた頃のことです。
上品な物腰と柔らかい笑顔が印象的な人で、私より少し年上でした。

「困ったことがあったら言ってね。お互い様だから♡」と優しく声をかけてくれて、嬉しかったのを覚えています。

繰り返される頼み事

しかし、その喜びは長く続きませんでした。
香織さんは「ちょっとお願いがあるんだけど」が口癖で、毎日のように頼み事をしてきたのです。

最初はゴミ出しでした。「うっかり忘れちゃって」と申し訳なさそうに言う香織さんでしたが、徐々に頻度が増して、毎日のように頼まれる始末。

ついには「裕子ちゃん、いつも朝早いよね? ついでにゴミ出しよろしくね!」と言われ、家の前にゴミ袋を置かれるようにまでなってしまいました。

それからも、香織さんの依存はエスカレートする一方。
「エアコンの効きが悪いからちょっと暖まらせて!」と押しかけてきたり、「部屋の掃除を手伝って!」と頼まれることも……。

他の住人とのトラブル

ある日、マンションの廊下で香織さんが他の住人と口論している場面に遭遇しました。共有スペースに香織さんが私物を置いていたことが原因のようです。

相手は「危ないですし、ルールは守ってください」と冷静に諭していましたが、香織さんは聞く耳を持たずヒステリックに声を荒らげています。

私は他の住人にも迷惑が及んでいることを確信しました。
後日それとなく住人たちに話を聞いてみると、「夜中にインターホンを鳴らされた」「勝手に合鍵を作ろうとされた」など、被害の声は想像以上に深刻でした。

後から分かったことなのですが、実は香織さんは過去に人間関係で大きなトラブルに遭ったことがあり、人間不信に陥っていたようです。

それなのに、心の奥底では誰かに頼りたい、繋がりたいという強い欲求があったのでしょう。その歪んだ気持ちが、他者への過剰な依存という形に表れていたのだと思います。

後味の悪い別れ

その後、ついに住人の1人が管理会社にクレームを入れ、香織さんは厳重注意を受けました。それからしばらくして、香織さんは挨拶もなく引っ越していきました。

正直、ほっと胸を撫で下ろしたのも事実です。香織さんの迷惑な行動は決して許されるものではありません。
しかし、彼女の心の奥底にあった寂しさや不安を思うと、今でも複雑な気持ちになります。

【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2025年1月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。