子どもが成長するにつれて、親子の関わり方も変わっていきますよね。特に思春期を迎えると、子どもとの距離感に悩む親御さんも多いのではないでしょうか。今回は、そんな親子関係の葛藤について友人が聞かせてくれました。

子育ての壁

息子、健太(仮名)は高校3年生。毎日バスケットボール部の練習に夢中です。
部活に打ち込む姿は頼もしいのですが、母親としては進路のことが気にかかって仕方がありません。
もう高校3年生だし、そろそろ将来のことを真剣に考え始めてほしいのに、健太は勉強よりもバスケットボールばかり……。

繰り返される衝突

「そろそろ進路のこととか考えてるの?」と尋ねてみても、「俺の人生だからほっといてくれよ」と突き放されます。
何度話しかけても同じ反応で、しまいには口を開くことさえためらわれるようになってしまいました。

夫はというと、そんな健太をただ黙って見守っているだけ。
このままで良いのかと不安が募るばかりの日々でした。

変化の兆し

そんなある日、健太が珍しく気まずそうに夫に相談を持ちかけました。
「実はバスケが強いK大学に行きたいんだけど、今の成績じゃ難しいみたいで……」と深刻な面持ちで話す健太。

夫は少し考えてから、「どうしてもバスケを続けたいなら、スポーツ推薦を狙ってみたらどうだ? お前にはその方が合っているんじゃないか」と提案しました。
その言葉に、健太の目はみるみる輝きを取り戻し、「明日先生に聞いてみる!」と明るい声で答えました。

夫の言葉は、反抗期の健太にとって、親の押し付けではなく、大人として頼れる存在からの真剣なアドバイスとして受け止められたようです。

夫はさらに、「もちろんスポーツ推薦だからって楽なわけじゃない。将来的なことも視野に入れて、メリットとデメリットをよく考えなさい」と冷静に付け加えていました。

未来への一歩

それからというもの、健太はバスケットボールの練習に一層打ち込むと同時に、推薦に必要な勉強にも真面目に取り組むようになりました。
以前のような反抗的な態度はすっかり影を潜め、夫や私にもたびたび進路の相談をするように。
夫の何気ない一言が、健太の心を大きく動かしたようです。

思春期の息子との向き合い方に悩んでいた私にとって、今回の出来事は大きな学びとなりました。
親として、子どもの背中をそっと押すタイミングを見極めることの大切さを改めて実感しています。

【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2024年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。