息子の善意と、思わぬ反応
「ママ、お財布拾ったよ!」と、小学3年生の息子が誇らしげに話してくれたのは、ある日の帰宅後のことです。
下校途中に落ちていた財布を見つけ、「困っている人の役に立ちたい」と考えた彼は、そのまま家に持ち帰りました。
A子は息子から事情を聞き、「これから交番に届けよう!」と提案。
息子と一緒に向かい、財布を警察に預けました。
きっと持ち主の元に戻るはず。
息子の優しい気持ちが嬉しくて、「よくやったね」と褒めながら帰宅しました。
ところが、同居する姑にこの出来事を話すと、思いがけない言葉が返ってきたのです。
善意が招くトラブル?
「なんで財布なんか拾ったの? 交番に届けたって、お金を抜き取ったなんて疑われたらどうするの?」
姑の反応は予想外でした。
「余計なことに首を突っ込むと、面倒なことに巻き込まれる」とまで言われ、息子はショックを受けた様子。
せっかくの良い行いをしたのに、怒られるなんて──。
A子も、姑の言葉に戸惑いました。
確かに世の中には善意を悪用する人もいるかもしれません。
でも、だからと言って、良いことをしようとする気持ちを否定してしまっていいのでしょうか?
夫の言葉に救われた夜
その夜、A子は帰宅した夫にこの出来事を話しました。
すると、夫はこう言いました。
「母さんの言いたいこともわかるけど、今回の息子の行動は褒めるべきだよ」
その言葉にホッとするA子。
確かにリスクを考えることも大切。
しかしそれよりも、誰かを思いやる気持ちを育てるほうが大事だと感じました。
子どもの優しさをまもるために
翌朝、夫は改めて息子に話をしました。
「昨日のこと、ママから聞いたよ。すごい良いことをしたね」と優しく声をかけ、「これからも、人を思いやる気持ちを大切にしてほしい」と伝えました。
息子の顔が、ふわっと明るくなりました。
A子は、彼の優しさを守ることができて良かったと思いました。
子どもは、純粋な気持ちで善意を行動に移します。
私たち大人の役割は、世の中の厳しさを教えることも大切ですが、それ以上に、その優しさを信じてあげることなのかもしれません。
【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2025年1月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Yumeko.N
元大学職員のコラムニスト。専業主婦として家事と子育てに奮闘。その傍ら、ママ友や同僚からの聞き取り・紹介を中心にインタビューを行う。特に子育てに関する記事、教育機関での経験を通じた子供の成長に関わる親子・家庭環境のテーマを得意とし、同ジャンルのフィールドワークを通じて記事を執筆。