親を大切にするのは素晴らしいことです。しかし、それがあまりにも行き過ぎてしまうと、自分自身の人生を見失ってしまう可能性もあります。今回は、そんな「親孝行」に縛られて生きてきた知人の体験談をお話しします。
親孝行の呪縛
私は、幼い頃から「親孝行しなさい」という言葉を繰り返し聞かされて育ちました。
親の期待に応えようと、良い子でいようと必死でした。
進学、就職、結婚……人生の岐路に立つたびに、親の意見を尊重し、自分の本当の気持ちは後回し。「親孝行のため」そう言い聞かせ、自分の気持ちを押し殺してきました。
いつも親の顔色を伺い、自分の意思で何かを決断することを避けてきたのです。
空虚な40代
40代になった今、親の勧めで見合い結婚した夫との関係は冷え切っています。子どももいないし、仕事にもやりがいを感じません。
まるでロボットのように、ただ生きているだけの日々──。
時折かかってくる母からの電話は、「あんた、最近暗い顔してるじゃない。もっと明るくしなさい。親が心配するでしょ。元気でいることが一番の親孝行よ!」と、変わらず「親孝行」を押し付けてくるばかりで、逆に私を暗い気持ちにさせます。
私のことを心配しているのではなく、自分の老後の面倒を見てもらえなくなることを心配しているだけなのは、分かっていました。