憧れのマイホーム
私は、30代の兼業主婦です。
そろそろマイホーム購入を意識するようになってきたのですが、物件の価格を見るたびにあることを思い出しては、ついため息が出てしまいます。
今日は私の、後悔してもしきれないエピソードを紹介させてください。
無碍にしてしまった母の想い
私が高校生だったときのことです。
実家の隣に接した土地が、空き地になりました。
昔から「隣の土地は借金してでも買え」と言いますから、母は迷わずにその土地を購入しました。
そして二階建ての家が二つ、縦に並んでいるような間取りでアパートを建てたのです。
母は嬉しそうに「いつかあなたたち姉妹が出戻ってきても、隣同士で住めるように」と、私と妹に言いました。
母には離婚歴があります。
私たち姉妹が結婚した後に万一離婚を望んだ場合、住むところやお金のことが理由で我慢しなくてもいいように、と考えてくれたのは、自身の経験もあってのことでしょう。
しかし幼かった私は「そんなのいらない! 勝手なこと言わないでよ!」と反抗的な返事をしてしまいました。
将来自分が離婚すると決めつけられたような気がして嫌だったのと、母が子離れしてくれず、ずっと縛られるのでは、と思い込んでしまったのです。
反抗期の娘の一言で、、、
私の言葉を聞いた母は、その後驚くべき行動に出ました。
「あなたたちのためを想って買ったのに、それならママだってこんなのいらない!」
と、アパートごとその土地をすぐに売ってしまったのです。
親子揃って、なんと感情的なんだろうと、自分たちのことながら思います。
私が言えることではないのですが、反抗期の娘の一言で、こんなに大きな判断をしてしまう母って……!
タイムスリップできるなら
どんなときだって、安心して帰ってこられる場所がある。
そのことがどんなに心を支え、有り難いことなのか。母の行動に込められた深い愛情を、今なら理解することができます。
ーーしかし、時すでに遅し(泣)
あれから20年後、興味本位であの土地の現在価格を調べたとき、膝から崩れ落ちてしまいました。そんな私を見て母は、ほら見ろと言うでもなく「まぁ、あのときのあなたの気持ちも分かるわ。若い子に将来のことを押し付けるのは、たしかに重荷だったかもしれないよね」と慰めてくれるものですから、後悔の念は余計に膨れてしまうのでした。
タイムスリップできることなら、当時に戻って自分を説得したいです。
「ママはとっても懐が深いし、先見の明があるよ。大人しく感謝しておきなさい」
しかしながら、そういうわけにもいかないので、夢のマイホームのために今日も頑張る私なのでした。
【体験者:30代・女性自営業、回答時期:2025年2月】
※本記事は、執筆ライターが体験した実話です。個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:大城サラ
イベント・集客・運営コンサル、ライター事業のフリーランスとして活動後、事業会社を設立。現在も会社経営者兼ライターとして活動中。事業を起こし、経営に取り組む経験から女性リーダーの悩みに寄り添ったり、恋愛や結婚に悩める多くの女性の相談に乗ってきたため、読者が前向きになれるような記事を届けることがモットー。