大人になった一人息子の本音
そうして息子も30代になり、めでたく結婚することに。お嫁さんが挨拶をかねて初めて家まで遊びにきてくれたとき、息子の子どものころの話になりました。すると息子が当時のエピソードや本音を話し始めたのです。
息子が近所の友だちの家に遊びに行くと、「今日晩御飯何が食べたい?」と専業主婦のママが友だちにいつも聞いていたそうで、その友だちのリクエスト通りの献立になるのがとてもうらやましかったとのこと。私は当時、出社前に栄養面を考えて晩御飯を作るなど自分なりによくやっていたと思っていたのですが、初めて聞いた息子の本音に何とも言えない気持ちになりました。
「お嫁さんには専業主婦になってほしい」
子どもの頃寂しかった経験から、息子はお嫁さんにはバリバリ働くのではなく「子どもや家庭を第一優先にしてほしい」「自分が稼ぐから(お嫁さんさえよければ)専業主婦になってほしい」とも言っていました。共働きが当たり前の時代に息子がこのような考えを持つようになったのは、紛れもなく私が原因です。
お嫁さんもほんわかした雰囲気の子で、家庭的なタイプ。私とは真逆に見えました。もちろん息子のことは何よりも大切で大好きでしたし、自分なりに家庭を大切にしてきたつもりでしたが……。
息子からしてみたら、「いつも家にいない母親」だったのでしょう。
キャリア優先は正解だったのか
田舎の市役所では珍しく、私は最終的に部長にまで昇進。「仕事をやり切った感」は自分の中で確かにありましたが、息子の本音を聞いて、本当に自分がやってきたことが正しかったのかどうか分からなくなってしまいました。息子が生まれてからも「自分本位で生きてきた」と言われれば、その通りかもしれません。
息子が息子にとっての理想の女性と出会えたことが今の私にとっては大きな喜びであり、息子には幸せな家庭を築いてほしいと心から願っています。
A子さんの順風満帆なキャリアの裏には、幼い息子さんの寂しさがあったようです。「自分のこれからの人生を見つめ直すいいきっかけを息子がくれた」とA子さんはおっしゃっていました。
【体験者:60代・女性主婦、回答時期:2025年1月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:ichika.K
2児の育児を機に、ママの悲喜こもごもを描くライターとしての活動をスタート。子育てメディアなどの執筆を経て、独立し現在はltnでコラムを連載中。大手企業の総合職でのOL経験、そこから夫の単身赴任によりワンオペでの育児を行った経験から、育児と仕事を両立するママの参考になる情報を発信すべく、日々情報をリサーチ中。