夢だったカフェを開店
しばらくして、由美子が起業したという話を聞きました。宝くじの当選金で、夢だったカフェを開店したようです。
由美子のカフェは、SNSで華々しくオープンを告知していました。
内装も豪華で、確かに写真映えはします。でも、肝心のコーヒーやケーキの味は平凡で、人々の関心がなくなると途端に客足が途絶えてしまいました。
案の定、由美子のカフェは1年も経たずに閉店。
経営の知識もないまま、宝くじの当選金を当てにして始めた事業は、当然うまくいくはずもなかったのでしょう。
以前の由美子なら、きっと地道に努力を重ね、夢を実現させていただろうに、大金を得たことで簡単に成功できるという錯覚に陥ってしまったのかもしれません。
もう元には戻れない
由美子から「お金を貸してほしい」という連絡が来たのは、閉店から数か月後のことでした。宝くじの当選金は底をつき、借金だけが残ったといいます。
かわいそうだとは思いましたが、私は援助を断りました。
ここで援助しても由美子のためにならないと思ったのと、大金を手にした時の彼女の変化を、どうしても受け入れられなかったのです。
お金は、時に残酷な現実を突きつけます。そして、失われたものは、二度と戻らないこともあるのです。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2024年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。