父が持病で入院し、大部屋に入った時の話です。
入室後、うろうろする父
病室に到着すると、父は私を残してどこかへ行きました。
うろうろと歩き回った末、戻ってくるなり隣のベッドとのカーテンを閉めるよう指示。
いつもならすぐにベッドに横になるのにどうして? と思いつつ閉めると、父が小声で耳打ちしました。
「隣のベッド、A伯父(母の伯母の夫)だと思うぞ。名前も間違いない」
伯父といっても、顔もうろ覚えだった父は、名札を確認しようと隣のベッドを何度も見に行っていたとのことでした。
大家族の背景
祖母は10人兄妹で、親族が多く、地元に住む者同士は親しい関係でしたが、A伯父は隣市に住んでいるため、顔を合わせる機会が少ない存在でした。
ちょうど、母は不足品を買いに出かけており、父と私だけが先に病室に入っていました。
確信は持てないまま、本人に尋ねるべきかどうか迷っていると、やがて見舞いに訪れた伯母の声が聞こえ確信した私たち。
カーテンを開けて挨拶すると、伯母は
「あら、あなたも入院したの?」
と驚いた様子。
まさか隣の空きベッドに入った人が親族だとは思わなかったようです。
同じ病院で診察を受けていたこともお互いに知らず、驚いていました。
その後、母も買い物から戻り伯母と再会、顔を合わせて驚きつつも苦笑していました。
バレてしまった入院
実は、A伯父は親族に入院を秘密にしていましたが、父の入院がきっかけでバレてしまいました。
母から話を聞いた別の伯母たちが
(父が入院し、同室の隣のベッドにA伯父がいる) と知るや否や、翌日から連日お見舞いに来る騒ぎに。
「なんで知らせてくれなかったの、みずくさいじゃないの」
と見舞いに来た親族たちに叱られるA伯父夫婦を見て、申し訳ない気持ちになりました。
家族が集まるにぎやかな病室
無口なA伯父と父でしたが、親族への対応に追われる日々も、二人で乗り越えていました。
その後、退院までベッドの境のカーテンは空けられたまま、仲良く過ごしていた父と伯父。
(静かに病院生活を送りたかったA伯父には申し訳なかったな)と思いつつ、偶然の再会がもたらした家族のつながりに不思議な縁を感じた出来事です。
【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年1月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。