筆者の話です。
私は飛行機がとても苦手で、新幹線で行けるところは全て新幹線を利用していました。
しかし友人Sとの旅行で、日程的に飛行機を使わざるを得なくなり──初めて飛行機に乗った時のエピソードをご紹介します。

ドキドキの搭乗前

初めての飛行機。
晴天の出発地に反して私の心はどんより。
(あんな鉄の塊が本当に空を飛ぶの?)
と思うだけで心臓はバクバク、冷や汗が止まりません。
待合室でも落ち着かず、何度も
「大丈夫?」
とSに聞いてしまい、
「大丈夫よ」
と励まされながら搭乗時間を迎えました。

いざ搭乗

外を見る余裕もないだろうと通路側を選び、シートベルトを締め直しますが、全身に力が入って動けません。
そんな私を見かねたSが
「そんなに緊張してるの? 手をつないでてあげようか」
と笑顔で差し出した手に、私は力いっぱいしがみつきました。

離陸の振動に耐えながら数分が過ぎ、飛行機は水平飛行に入りました。
やっと目を開けると、少しだけ外の景色を楽しむ余裕ができたのです。
初めてのドリンクサービスを受け、緊張で固まっていた体も次第にほぐれていきました。

揺れる機内

順調な飛行に少し安心した頃、機内にポーンという音が流れました。
「雲の影響で揺れが予想されます」
という客室乗務員からのアナウンスが流れ、ベルトサインが点灯。
飛行機は厚い雲の中を進み、外の景色はどんどん暗くなっていきます。

ふわりと体が浮く感覚に息をのむたび、
「これ本当に大丈夫?」
とつい声が出てしまい、固まる私にSが再び手を差し出してくれました。
冷たく汗ばんだ私の手を握り
「こんなことはよくあるよ」
と微笑むS。
その言葉が、緊張していた心を少しだけ落ち着かせてくれました。
不規則な揺れに不安でいっぱいでしたが、Sの優しい笑顔と言葉が私を支えてくれたのです。

着陸後の本音

無事に着陸し、思わず拍手をしてしまうほど安堵しました。
荷物受取所でスーツケースを待っていると、Sがぽつりと一言。
「実は私もあんなに揺れたのは初めてだったの!」
彼女も怖かったのに、私を励ますために笑顔で振る舞ってくれていたと知り、その優しさに胸が熱くなったのです。

それ以来、Sと何度も飛行機に挑戦し、少しずつ慣れることができました。
今では、一人でも飛行機に乗り、旅行を思い切り楽しめるようになっています。
飛行機に搭乗するたび、あの日のSの笑顔と励ましが心に浮かび、心がほっこり温かくなるエピソードです。

【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年1月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。