帰省中に見つけた“違和感”
長期休暇に実家へ帰省した時のこと。久しぶりに祖母とゆっくり過ごそうと、物置部屋にある古いアルバムを取りに行きました。その部屋には、祖父が生前集めていた骨董品や大切な記念品が置かれていたのですが、妙に空間がスカスカしていることに気がつきました。
「なんか、ここにあった壺、なくなってない?」と保管していた祖母に聞くと、「ああ、それなら〇〇(叔父)が持って行ったよ。価値があるものだから換金するって」と、まるで気にしていない様子。私は驚き「何の相談もなく持って行くなんてありえない」と内心怒りが沸き上がりました。
勝手に売ろうとする親戚
祖父が大切にしていたその壺は、ただの骨董品ではありません。祖父が若い頃に苦労して手に入れたもので、祖父自身が「これは私の人生の証のようなものだ」と話していたことを思い出しました。価値がどうであれ、家族にとっては宝物のような存在です。それを、叔父が勝手に売り払おうとしているなんて信じられませんでした。
すぐに母経由で叔父に連絡を取ってもらい、「売るなんてひどいよ!」と言うと、叔父は「どうせ使ってないし、価値があるならお金にした方がいいだろ」と開き直る様子でした。しかし、私は「私たちにも一言相談してよ!」と、冷静に話し合うことにしました。
祖母の本当の気持ち
そこで私は「おばあちゃんは、本当に壺を手放したかったの?」と直接聞いてみると、祖母は少し困ったような顔をしながら、「おじいさんが大切にしていたのは知ってる。でも、私は正直あの壺を見るたびに寂しくなるのよ」とポツリ。
驚きました。祖母は祖父の思い出を大切にする一方で、亡き夫の遺品を見ることが辛くなっていたのです。そこで、「だったら、手放すにしても、みんなで話し合いながら決めようよ」と提案すると、祖母も納得してくれました。
祖父の思い出
後日、実家に母と祖母、叔父も集まり、遺品の話になりました。私は、祖父が壺を生涯大切にしていたことや祖母の気持ちに触れつつ「おじいちゃんの思い出の品で、私たちにとっても大切なものだからこそ、どうするかは家族全員で話し合おうよ」と伝えました。
遺品を見るのが辛いという祖母の本音には、家族も同感。母が「辛いよね。私もお父さんの遺品を見ると、もっとこうしてあげればよかったとか、色んなこと考えちゃう。でも、たとえお金になるとしても、悲しい気持ちのまま手放すと、きっと後悔すると思うの。だから、いつかお母さんが手放したり売ることを考える時には、みんなで整理しましょう」と言うと、祖母は「うん、お願いするわ」と返しました。叔父も渋々「分かったよ、もう勝手に持ち出さない」と約束してくれました。
結局、壺は実家に戻り、祖母も「やっぱり、もう少しだけ置いておこうかな」とほっとした表情を浮かべました。祖父が残したものに込めた思いは、決して換金だけでは測れないものであり、家族の思いをのせて大切にするべきものだと改めて感じた瞬間でした。
H子さんは「遺品は単なるモノではなく、故人の思いが詰まっているもの。だからこそ、残された家族がどのように受け継ぐかをしっかり話し合うことが大切」だと感じたそうです。
家族の気持ちを大切にすることで、祖父の思い出も、家族の絆も守ることができたエピソードでした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2024年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:池田みのり
SNS運用代行の職を通じて、常にユーザー目線で物事を考える傍ら、子育て世代に役立つ情報の少なさを痛感。育児と仕事に奮闘するママたちに参考になる情報を発信すべく、自らの経験で得たリアルな悲喜こもごもを伝えたいとライター業をスタート。