妊婦の娘を気づかう母
私が妊娠中だった頃の話です。娘の妊娠をとても喜んでくれた母は、「気持ち悪くない?」「重い荷物は持っちゃだめよ」などと私の体調をいつも気づかってくれていました。
そんなある日、母が「赤ちゃんのお洋服でも買いに行きましょう」と誘ってくれたので、一緒に電車で買い物へ行くことになりました。
優先席に猛ダッシュ
母は駅のホームではいたって普通でした。しかし、電車が到着すると「いい? 私に任せてよ!」となにやら意気込み始めたのです。
そして電車のドアが開いたのと同時に、人混みをかき分け優先席に猛ダッシュ! 取り残された私は開いた口が塞がりませんでした。
その直後、優先席を確保した母は、席のど真ん中にバッグをドカンと置いて私に大声でこう言ったのです。
「妊婦なんだから早くここに座りなさい! 立っていると体に障るわよ!」
母のデリカシーのない言動に、私の顔は真っ赤になりました。
周囲の視線が痛すぎる
そのとき車内は混雑していたこともあり、他に優先席を利用したい人がいるかもしれないと思った私は、
「元気だから平気だよ。他の人に座ってもらおうよ」
と母に伝えました。
それでも、
「妊婦が優先席に座るのは当然でしょ? 周りの人もそう思っているわよ」
と聞く耳を持たない母。
私は「本当に大丈夫だから」と自分の意思で立つことに。しかし、母は「すぐに座れるように私が場所取りしておくわね」と他の人を座らせないように、優先席の前を陣取ったのです。
これには周囲も呆れたのか、冷たい目線をこちらに向けてきました。正直かなり気まずかったです……。
結局その優先席には誰も腰をかけないまま、私たちは電車を後にしたのでした。
心配性もほどほどに
きっと母の威圧的なオーラに、周りは気を使わざるを得なかったのでしょう。
母が私のために優先席を確保しようとしてくれたのはありがたかったですが、妊婦だからといってあまりに気を使われ過ぎるのも嫌だなと感じてしまいました。
母には周囲の人のことも考えて、常識的な行動をしてほしかったです。
【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2024年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:花澤ひかる
主婦ライター。ママ友たちからの悩みを聞くうちに、この声を世に届けたいと、ブログなどで活動を開始し、現在はltnライターに転身。主婦目線を大事に、ママ世代へのフィールドワークと取材を行い、そのリアルな思いをコラムにすることをライフワークにする。