A子は母親との仲が良く、いつも一緒に過ごしていました。
しかし、彼女は知らず知らずのうちに、恋人との関係に対する配慮が足りなくなっていたのです。
親子関係と恋人との関係のバランスについて考えさせられるお話です。

母親との絆、大切だけど──

私は小さいころから母親と過ごす時間が大好きです。

大人になってからも一緒に買い物や旅行を楽しんでいました。

そんな母との関係は、自然と私の交際相手にも影響を与えています。

彼も母のことを気に入ってくれて、よく一緒に食事や旅行に出かけることがありました。

母と彼が仲良くしている姿は、私にとって何よりの幸せでした。

ある日、母との旅行を計画した私は、当然のように彼を誘います。

「一緒に行こう」と声をかけると、彼は「仕事の調整をしてみる」と返事をくれました。

これまで彼が私の頼みを断ったことはなかったため、今回も一緒に行けると思い込んでいました。

まさかの断り……その一言で気づいたこと

後日、彼から「仕事の調整ができなかった」との連絡が。

その内容自体に特に違和感はありません。

ただ、彼の声の調子やこれまでの関係から、どことなく引っかかるものを感じたのです。

思い切って「何か他に理由があるの?」と尋ねると、しばらくの沈黙の後、彼はこう話しました。

「A子の母さんと一緒に行くのは、もう遠慮したい」

その瞬間、我に返った私。

これまで母との時間を優先しすぎて、彼の気持ちに寄り添えていなかったのです。

振り返ると、旅行のたびに彼に運転や荷物持ちを頼んでいました。

彼は嫌な顔ひとつせず引き受けてくれましたが、それが少しずつ重荷になっていたのかもしれません。

後悔と反省、そして気づき

私はすぐに「ごめんね。今まで気づかなくて」と謝りました。

しかし、彼の気持ちはすでに離れていて──。

その後の会話も続かず、私たちの関係は終わりを迎えることとなりました。

その時初めて、私の行動が彼にどれほどの負担だったのかを痛感。

母との絆ももちろん大切ですが、同じように彼の気持ちにも目を向けるべきでした。

バランスが大事、気持ちを尊重すること

この経験を通じて私は、大切な人との関係では、お互いの気持ちを大事にすることが何より重要だと気づきました。

母との絆を守りながらも、恋人の立場や感情に配慮する。

そうした思いやりの心を持って、これからはすべての大切な人たちと、バランスの取れた関係を築いていきたいと思った出来事でした。

【体験者:20代・女性主婦、回答時期:2024年12月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:Yumeko.N
元大学職員のコラムニスト。専業主婦として家事と子育てに奮闘。その傍ら、ママ友や同僚からの聞き取り・紹介を中心にインタビューを行う。特に子育てに関する記事、教育機関での経験を通じた子供の成長に関わる親子・家庭環境のテーマを得意とし、同ジャンルのフィールドワークを通じて記事を執筆。