「三つ子の魂百まで」ということわざもあるように、幼いころの思いは大人になっても根強く残っているものです。今回は親との関係に悩み続けた友人が、親から解放されるために奮闘したエピソードをお届けします。

何でも私のせいにする母

母は、私が子どもの頃から、何でも私のせいにしてくる人でした。
おもちゃが壊れたら「お前が乱暴に扱ったからだろう」、テストの点が悪ければ「お前が勉強しなかったからだ」、友達と喧嘩をすれば「お前が意地悪したんだろう」……。

何か問題が起きると、必ず「お前が悪い」と決めつけ、私を責め立てるのです。
まるで、私が全ての悪の元凶であるかのように。

反論しようとしたけれど

私が反論しようとすると「口答えするな!」と怒鳴られ、さらに責め立てられます。
幼い子どもが親にそんな風に扱われて、それ以上強く言い返せるわけがありません。

結局私は何も言い返せずに、ただただ母の言葉を聞き、自分を責め続けるだけの従順な子どもになるしかありませんでした。

長年、母の言葉に傷つけられ、押さえつけられ、私は自信を失っていきました。
自分の意見を言うことが怖くなり、いつも周りの顔色を伺うようになってしまったのです。

思いがけない言葉

大人になってからも、その状況は変わりませんでした。
しかし数年前、私は職場での人間関係に悩んでついに体調を崩し、心療内科を受診することに。そこでの診察の際に、医師に母との関係やこれまでのことを話すと、思いがけない言葉をかけられました。

「それ、あなたは全然悪くないからね」

そのシンプルな言葉が、私の心に深く響きました。
長年私を縛りつけていた呪縛から、ようやく解き放たれたような気がして、涙が止まりませんでした。

治療を通して学んだこと

医師との会話を通して、私は初めて、自分が母の言葉にどれほど苦しめられてきたかを自覚しました。
そして、このままではいけない、自分の人生を取り戻さなければいけない、と強く思ったのです。

その後、自分を守るために、私は意識して母との距離を置くことを決意!
連絡の頻度を減らし、母の言葉に左右されないようにしました。

正直、最初は罪悪感もありました。
母を傷つけているのではないか、親不孝なのではないか、と自問自答を繰り返したものです。

でも、徐々に心が軽くなっていくのを感じられるようになりました。

母とは完全に縁を切ったわけではないので、今でもやっぱり気持ちが揺らいでしまう時はありますが、母の顔色を伺う必要がなくなり、自分の気持ちを素直に表現できるようになってきたことで、ようやく私は本当の自由を手に入れたのです。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2024年11月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。